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故意の内容

 故意があるとは、構成要件に該当する客観的事実を認識し(認識的要素)、その内容を実現する意思(意思的要素)をもつことである。だが、構成要件該当事実とはどの範囲まで含むのだろうか。

 例えば殺人罪(199)の構成要件は「人を殺」すことだが、人を殺すために銃を撃ったとき、銃を撃つ行為まで構成要件該当事実に含まれるのだろうか。故意の内容として、銃を撃つ認識と銃を撃とうとする意思まで含まれるのだろうか。現実の殺人の事例では、人を殺す認識・意思と、銃を撃つ認識・意思は一体化しているようにも思える。構成要件的結果と密接する手段まで構成要件該当事実に含めるのは妥当か。

 だが、やはり殺人の故意は人を殺すことの認識・意思だと思える。銃を撃つことの認識・意思はあっても、人を殺すことの認識・意思がなければ殺人の故意とは言えない。殺すつもりがなくて銃を撃っているのかもしれない。ただ、犯罪者が手段と結果を結び付けて行為しているとき、すなわち人を殺す手段として銃を撃つ行為を認識しているとき、銃を撃つ行為の認識だけで自動的に人を殺す認識もしているとは思える。