社会科学読書ブログ

社会科学関係の書籍を紹介

アンジェラ・ダックワース『やり抜く力』(ダイヤモンド社)

やり抜く力 作者:アンジェラ・ダックワース ダイヤモンド社 Amazon 努力の重要性を訴えている本。人生の成功は「やり抜く力」で決まる。知能や成績が良くても、やり抜く力がないと成果を上げることができない。才能×努力=スキル、スキル×努力=成果、である…

東畑開人『居るのはつらいよ』(医学書院)

居るのはつらいよ: ケアとセラピーについての覚書 (シリーズ ケアをひらく) 作者:東畑 開人 医学書院 Amazon デイケア施設のフィールドワーク。単なる就労記や体験記と異なるのは、著者が批評的視座を持つ理論的知性であり、現場で実際に働くことにより、そ…

私たちは疲れている

一定以上勉強している人なら、多くが「自律した個人」として生きようと思っているだろう。そして、「成熟した大人」として生きようと思っているだろう。だが、日々労働しながら生きていると、このよう自律や成熟に疲労を感じることがないだろうか。 何か職場…

将基面貴巳『愛国の起源』(ちくま新書)

愛国の起源: パトリオティズムはなぜ保守思想となったのか (ちくま新書, 1658) 作者:将基面 貴巳 筑摩書房 Amazon 日本語の「愛国」の語源となったパトリオティズムについて歴史的に解読している本。パトリオティズムには、自国への愛という狭義の愛国の側面…

諸富祥彦『「本当の大人」になるための心理学』(集英社新書)

「本当の大人」になるための心理学 心理療法家が説く心の成熟 (集英社新書) 作者:諸富祥彦 集英社 Amazon ヴィクトール・フランクルの研究者による人間の成熟論。成熟した人間は単独者として生きている。自立して、他者からの承認を得なくとも自らを自然に肯…

山口周『世界のエリートはなぜ「美意識」を鍛えるのか?』(光文社新書)

世界のエリートはなぜ「美意識」を鍛えるのか?~経営における「アート」と「サイエンス」~ (光文社新書) 作者:山口 周 光文社 Amazon 経営においてアートの重要性が増していることを指摘している本。経営はアートとサイエンスとクラフトからなっている。ア…

人生充実しているマウンティング

社会人になって気づいたことがある。それは、一定以上の上の世代というのは「俺の方が苦労している」「俺の方が忙しい」というマウンティングをしてくるということだ。不幸自慢というのは子どもがやることであって、私などは二十歳くらいを境にそんな子供じ…

ルーズさに耐える能力

さて、昨今のご時世では世の中はどんどんルーズになっているように思える。みんながみんなギチギチに頑張ってサービス向上していこうという時代はもう終わった。郵便物の配達が遅くなったことに象徴されるように、いま、世の中はかつての高度経済成長期とは…

千葉雅也『現代思想入門』(講談社現代新書)

現代思想入門 (講談社現代新書) 作者:千葉雅也 講談社 Amazon 著者なりに解釈した現代思想を人生に接続しようとする本。デリダは「概念の脱構築」を行った。健康/病気など片方が優位にあるような対立を、劣位の方に味方するようなロジックを用いて、対立す…

将基面貴巳『従順さのどこがいけないのか』(ちくまプリマー新書)

従順さのどこがいけないのか (ちくまプリマー新書) 作者:将基面 貴巳 筑摩書房 Amazon わかりやすいがすごく根本的で重要なことを言っている本。従順であることは一種の美徳のように思われている節があるが、実際は従順であることには様々な問題がある。例え…

人不足は何が困るか

現在日本の様々な職場で人不足が深刻である。職場の人員不足により、職場に何が起きて、職員に何をもたらすか整理してみたい。 私が近ごろ配属された部署では、係長を含め4人定員だがそのうち2人病休という状態である。例えばそのような実際の経験をもとに…

上村紀夫『「辞める人・ぶら下がる人・潰れる人」さて、どうする?』(クロスメディア・パブリッシング)

「辞める人・ぶら下がる人・潰れる人」さて、どうする? 作者:上村紀夫 クロスメディア・パブリッシング(インプレス) Amazon 経営サイドから離職を防ぐ方法について書かれた本。社員が求めるものと会社が与えるものの差がマイナス感情を生み出す。社員が求…

霜山徳爾『人間の限界』(岩波新書)

人間の限界 (岩波新書 青版 917) 作者:霜山 徳爾 岩波書店 Amazon 碩学による人間に関する滋味あふれるエッセイ。人間とはどういう存在であるかについて、味わう、遊ぶ、賭ける、まなざし、手、足、めまいなど多角的な切り口から迫っていく。今となっては特…

本村凌二『剣闘士』(中公文庫)

剣闘士 血と汗のローマ社会史 (中公文庫) 作者:本村凌二 中央公論新社 Amazon 古代ローマにあった剣闘士という職業について概観できる本。剣闘士競技はそもそも父祖の弔いのための供犠という位置づけだったが、だんだん選挙に利用されたりして、最終的には世…

オズワルド・シュミッツ『人新世の科学』(岩波新書)

人新世の科学: ニュー・エコロジーがひらく地平 (岩波新書 新赤版 1922) 作者:オズワルド・シュミッツ 岩波書店 Amazon 新しい時代の生態学について紹介している本。生態学とは、生物間の捕食・被捕食の関係やそこにおける物質の代謝や分解、物質の流れなど…

ブレイディみかこ『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー』(新潮社)

ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー(新潮文庫) 作者:ブレイディみかこ 新潮社 Amazon イギリス在住の著者は、アイルランド人と結婚して混血の子どもを育てている。本書はイギリスの学校に通う息子との日常をつづったノンフィクションである。学校…

中村佑子『マザリング』(集英社)

マザリング 現代の母なる場所 (集英社文芸単行本) 作者:中村佑子 集英社 Amazon 母であることの現象学。子を産むときの圧倒的な体験はあまり言語化されてこなかった。本書は、母であることについて多角的に言語化することを試みている。子を産んだ時、自分と…

ブレイディみかこ『ヨーロッパ・コーリング・リターンズ』(岩波現代文庫)

ヨーロッパ・コーリング・リターンズ: 社会・政治時評クロニクル 2014-2021 (岩波現代文庫 社会 330) 作者:ブレイディ みかこ 岩波書店 Amazon 本書は、著者がYahooなどの各媒体に発表した短い時評を年代別に編んだものである。扱っているのは主にイギリスの…

勤務時間中のスマホ

かつては、勤務時間中に携帯電話をいじっていると職務専念義務に違反するとして懲戒処分を受ける可能性すらあった。だが、スマホの高機能化により、勤務時間中にスマホを操作することが必ずしも職務専念義務に違反することにはならなくなっているのが近年の…

育てることで育つ

娘が産まれてから間もなく300日が経とうとしている。私はこれまで育児に携わってきたわけだが、まさに娘を育てることにより私自身も育っていると思う。 まずは人生の豊饒化である。一つには自らの血を引いた人間が一人生まれ出たということにかかわる喜び…

武井彩佳『歴史修正主義』(中公新書)

歴史修正主義-ヒトラー賛美、ホロコースト否定論から法規制まで (中公新書, 2664) 作者:武井 彩佳 中央公論新社 Amazon 主にホロコーストに関する歴史修正主義について入門的に書いた本。歴史修正主義には、政治体制の正当化や不都合な事実の隠蔽という政治…

前野ウルド浩太郎『バッタを倒しにアフリカへ』(光文社新書)

バッタを倒しにアフリカへ (光文社新書) 作者:前野 ウルド 浩太郎 光文社 Amazon ノンフィクション・エンターテインメント。昆虫学で博士号を取った著者が、自らの研究生命を保つためにアフリカへ旅立ち現地で奮闘する物語。一見するとアフリカの冒険譚のよ…

河野英太郎『社会人10年目の壁を乗り越える仕事のコツ』(ディスカヴァー)

社会人10年目の壁を乗り越える仕事のコツ〈若手でもベテランでもない中堅社員の教科書〉 作者:河野英太郎 ディスカヴァー・トゥエンティワン Amazon 若手でもベテランでもない、中堅職員としての10年目職員に向けたティップス。10年目職員の悩みに一つ一…

青木栄一『文部科学省』(中公新書)

文部科学省-揺らぐ日本の教育と学術 (中公新書 2635) 作者:青木 栄一 中央公論新社 Amazon 文部科学省の実態に迫った本。文部科学省は背後にいる官邸、政治家、他省庁、財界からの圧力に弱く、他方で教育界や国立大学には強い立場にある。外に弱く内に強いの…

明るく出る、明るくかける

今の部署で勤務していて学んだことは多岐にわたるが、その中で最もシンプルかつ最も重要なことは電話の出方である。今の部署では客から電話がかかってくることが結構多い。それも、良い内容よりは悪い内容の方が多い。クレームもしばしばある。だから、電話…

育児のつらさの正体

わが子は生後8か月でもうすぐ9カ月になる。私もまた父親として育児に携わったが、育児はなかなかつらいものである。抱っこしたり世話をしたりという介護労働的なつらさは確かにある。だがそれは労働としてのつらさである。睡眠不足になったり時間が自由に取…

林望『習近平の中国』(岩波新書)

習近平の中国――百年の夢と現実 (岩波新書) 作者:林 望 岩波書店 Amazon 習近平を中心として展開される中国現代史。習の前の胡錦濤国家主席の代では、先代の江沢民が院政を敷くことで中国共産党内部の軋轢を生み出していたため、胡錦濤は習に代を譲るときに完…

離席のススメ

職場で仕事をしていても、人間の集中力などしょせん限界がある。ものの本によると人間の集中力は15分単位でしか持続しないらしい。深い集中力は15分が限度で、15分単位で集中ができるとのこと。これは私も仕事をしていて実感するところで、だいたい3…

中西嘉宏『ロヒンギャ危機』(中公新書)

ロヒンギャ危機―「民族浄化」の真相 (中公新書) 作者:中西嘉宏 中央公論新社 Amazon ミャンマーの少数民族であるロヒンギャに対するジェノサイド疑惑に関して丁寧に叙述している。ロヒンギャとはラカイン州に住む無国籍のムスリム少数民族である。植民地期に…

坂倉昇平『大人のいじめ』(講談社現代新書)

大人のいじめ (講談社現代新書) 作者:坂倉昇平 講談社 Amazon 本書は職場におけるいじめやハラスメントについて、豊富な具体例をもとにその背後にある構造を探っている。最近のいじめは、過酷な労働環境の下で起こることが多く、職場全体が加害者化し、企業…