社会科学読書ブログ

社会科学関係の書籍を紹介

時差出勤を三日やって気づいたこと

うちの職場でも時差出勤がごく当たり前のシフト変更として定着しつつある。私は朝型の人間で、朝に最も仕事の効率が高いため、いつも朝早く、7時前には出勤して定時に帰るというスタイルで勤務していた。 私は幼い子供の育児を抱えているため、夕方はなるべ…

ロベール・ヌービュルジェ『新しいカップル』(新評論)

新しいカップル: カップルを維持するメカニズム 作者:ロベール ヌービュルジェ 新評論 Amazon カップルについて網羅的に記述している良書。カップルは、お互いに神話を共有することで成立する。共通の属性や共通の体験などがカップルの神話に組み込まれ、カ…

斎藤淳子『シン・中国人』(ちくま新書)

シン・中国人 ──激変する社会と悩める若者たち (ちくま新書) 作者:斎藤淳子 筑摩書房 Amazon 現代の中国人の生活についてまとめた良書。中国はここ二十年くらい急速に変化した。若者たちも大きく変化した。経済成長と少子化、恋愛や結婚に対する考え方などが…

阪井裕一郎『結婚の社会学』(ちくま新書)

結婚の社会学 (ちくま新書) 作者:阪井裕一郎 筑摩書房 Amazon 「異性同士による恋愛結婚」という結婚の通念を相対化する手堅い本。日本でも昔は結婚は家同士で行われるものであり、恋愛結婚は少なかった。また、近年ではパートナーシップが多様化しており、…

田中圭太郎『ルポ 大学崩壊』(ちくま新書)

ルポ 大学崩壊 (ちくま新書 1708) 作者:田中 圭太郎 筑摩書房 Amazon 大学の経営崩壊に関するルポルタージュ。大学は、トップの独裁により暴走したり、文科省の私物化によって国に都合よく運営されたり、学問の自由が脅かされる事例が生じている。そのほ…

中井遼『ナショナリズムと政治意識』(光文社新書)

ナショナリズムと政治意識~「右」「左」の思い込みを解く~ (光文社新書) 作者:中井 遼 光文社 Amazon ナショナリズムと政治的な左右とのかかわりについて論じた本。ナショナリズムとは、文化を共有する人々を身分や階級を超えて一つの集まりとして結び付け…

育児は人権尊重に資する

経済学では古典的に、投下された労働に応じて価値が生まれるとされていた。もちろんこれは商品の価値のことなので、育児について直接には当てはまらないかもしれない。だが、育児を経験した人なら、乳幼児に対して大量の育児労働を投下するため、そこにかけ…

納富信留『世界哲学のすすめ』(ちくま新書)

世界哲学のすすめ (ちくま新書 1769) 作者:納富 信留 筑摩書房 Amazon 世界哲学の試みについて書いた重厚な本。旧来、西洋哲学以外の哲学的営みは、「宗教」や「思想」として「哲学」の地位を与えられてこなかった。だが、「宗教」や「思想」にもそれぞ…

秋山千佳『ルポ 保健室』(朝日新書)

新書576 ルポ 保健室 (朝日新書) 作者:秋山千佳 朝日新聞出版 Amazon 保健室についてのルポルタージュ。保健室は、家庭にも学校にも居場所のない生徒たちが居場所を求めてやってくる場所である。虐待を受けていたり、いじめを受けていたり、発達障害を抱…

山本謙治『エシカルフード』(角川新書)

エシカルフード (角川新書) 作者:山本 謙治 KADOKAWA Amazon 倫理的な食について書かれた本。倫理的な消費とは、①人への取り組みとして、児童労働への対応、労働者を搾取しない公正な報酬、労働者の待遇の公正性、②環境への取り組みとして、持続的な土地利用…

今井悠介『体験格差』(講談社現代新書)

体験格差 (講談社現代新書) 作者:今井悠介 講談社 Amazon 子どもの学校外の体験に格差が存在しているという問題を指摘している。放課後のスポーツ・運動、文化・芸術や、休日の自然体験・社会体験・文化的体験において、親の所得や住んでいる地域によって格…

散歩、図書館、おもちゃ

子育てをしていると、子どもの成長には日常生活のあらゆることが貢献していることがわかる。子どもが日々成長していく中で、子どもの生活のすべてがその成長の材料となっている。その材料の中で、私たち夫婦が特に気を使っているものを挙げると、散歩と図書…

小林重敬『まちの価値を高めるエリアマネジメント』(学芸出版社)

まちの価値を高めるエリアマネジメント 作者:小林 重敬,一般財団法人森記念財団 学芸出版社 Amazon エリアマネジメントについての実例を交えた導入書。エリアマネジメントとは、都市全体から考える都市づくりに代わって、エリアという小さな単位で考え、その…

姜尚中『アジアを生きる』(集英社新書)

アジアを生きる (集英社新書) 作者:姜 尚中 集英社 Amazon 政治学者が自らの学問人生を振り返って、そこでアジアについて感じたことをつづった自伝的エッセイ。アジアは文明の後発地域として捉えられてきて、中でも韓国は常に後塵を拝してきた。アジアの中で…

丸山康司『再生可能エネルギーの社会化』(有斐閣)

再生可能エネルギーの社会化 -- 社会的受容性から問いなおす 作者:丸山 康司 有斐閣 Amazon 再生可能エネルギーは注目されているが、それが社会に受け入れるためには一定の条件を満たす必要があるとしている本。人間は生活の基盤としてエネルギーを必要とし…

藤田正勝『日本哲学入門』(講談社現代新書)

日本哲学入門 (講談社現代新書) 作者:藤田正勝 講談社 Amazon 「日本思想」ではなく、「日本哲学」の入門書。哲学の受容から始まり、西田幾多郎や坂部恵や田辺元などの思想を紹介している。西洋に特権的に「哲学」が存在するのではなく、日本にも固有の「哲…

孤独なクレーマー

行政職員をやっていると様々なクレームを受ける。そのクレームが自分の担当する事務や所管する事務に関するものだったら速やかに対応するのみだ。だが、中にはほとんど自分の担当事務と関係のない案件について切々とクレームを訴える人もいる。端的にクレー…

後藤正治『清冽』(中公文庫)

清冽 - 詩人茨木のり子の肖像 (中公文庫 こ 58-1) 作者:後藤 正治 中央公論新社 Amazon 茨木のり子の生涯を描いた初の評伝。茨木は家柄もよく容姿にも恵まれながら、柔らかく、でありながら毅然とした態度で戦争などの日本社会の動きと対峙した。「倚りかか…

清水俊史『ブッダという男』(ちくま新書)

ブッダという男 ――初期仏典を読みとく (ちくま新書) 作者:清水俊史 筑摩書房 Amazon ブッダ研究の論点がわかるスリリングな本。我々がブッダの教えを解釈する際、どうしても現代においても有意義であってほしいというバイアスがかかり、現代の価値観を先取り…

本間・中原『会社の中はジレンマだらけ』(光文社新書)

会社の中はジレンマだらけ~現場マネジャー「決断」のトレーニング~ (光文社新書) 作者:本間 浩輔,中原 淳 光文社 Amazon 経営学者の中原淳と、ヤフーの上級執行役員が、日本の職場をめぐる多様な論点について対談している本。話題は、上司が部下に仕事を振…

情報公開担当職員を2年やって気づいたこと

1.量の多さ 近年、情報公開制度が国民に広く知られるようになったため、公文書開示請求や保有個人情報開示請求の件数は増加の一途をたどっている。それをすべて把握するため、仕事量は多い。さらに、それに比例するように不開示決定等に対する審査請求の数…

石垣りん『詩の中の風景』(中公文庫)

詩の中の風景-くらしの中によみがえる (中公文庫 い 139-2) 作者:石垣 りん 中央公論新社 Amazon 石垣りんが近現代詩を一篇ずつ紹介しているエッセイ集である。素朴ながらも心を打つ詩が多く紹介されていて、読んでいて心から感情があふれ出しそうになる。石…

橋本努『自由原理』(岩波書店)

自由原理 来るべき福祉国家の理念 作者:橋本 努 岩波書店 Amazon 福祉国家の根本原理について考察した本。福祉国家の理念については様々なものが挙げられる。①福祉国家以前に存在した愛徳の理念で共同体の外側を包摂するもの、②ロックによる個人的所有権に基…

原俊彦『サピエンス減少』(岩波新書)

サピエンス減少 縮減する未来の課題を探る (岩波新書 新赤版 1965) 作者:原 俊彦 岩波書店 Amazon 日本だけでなく世界全体もいずれは人口減少に直面し人類は消滅に向かっていくという見取り図を提示する衝撃の本。人口学の専門家が著した本なので信憑性は高…

木村忠正『デジタルネイティブの時代』(平凡社新書)

デジタルネイティブの時代 作者:木村忠正 平凡社 Amazon 質的研究と量的研究を掛け合わせて行われたデジタルネイティブの研究。デジタルネイティブとは、デジタル技術に青少年期から本格的に接した世代のことで、1980年前後以降生まれの世代のことである…

齊藤彩『母という呪縛 娘という牢獄』(講談社)

母という呪縛 娘という牢獄 作者:齊藤 彩 講談社 Amazon クライム・ノンフィクション。異常な性格を持つ母親から、暴力・罵倒・強要などの虐待を受け続け、最終的に母親を殺した娘の物語。実際に起こった刑事事件の綿密な取材のもと生まれた非常に読みやすい…

岡嶋裕史『メタバースとは何か』(光文社新書)

メタバースとは何か~ネット上の「もう一つの世界」~ (光文社新書) 作者:岡嶋 裕史 光文社 Amazon メタバースについて、具体例を挙げながら解説している本。メタバースとは、「現実とはすこし異なる理で作られ、自分にとって都合がいい快適な世界」のことで…

船木亨『倫理学原論』(ちくま新書)

倫理学原論 ――直感的善悪と学問の憂鬱なすれちがい (ちくま新書) 作者:舟木亨 筑摩書房 Amazon 倫理学の根本を探求した本。倫理はしばしば宗教・政治・経済・法律と混同されて互いに入り混じってしまう。宗教・政治・経済・法律が混ざっていない純粋倫理につ…

寮美千子編『空が青いから白をえらんだのです』『名前で呼ばれたこともなかったから』

空が青いから白をえらんだのです ―奈良少年刑務所詩集― (新潮文庫) 新潮社 Amazon 名前で呼ばれたこともなかったから:―奈良少年刑務所詩集― (新潮文庫 り 5-2) 新潮社 Amazon 奈良少年刑務所において、編者が「社会性涵養プログラム」として行った詩作講座…

マウンティングポリス『人生が整うマウンティング大全』(技術評論社)

人生が整うマウンティング大全 作者:マウンティングポリス 技術評論社 Amazon 爆笑必至であるが、なかなか鋭い洞察を示してくれるマウンティングに関する本。マウンティングの実例を豊富に示したうえで、相手にマウントをとらせることがビジネスシーンでも役…