社会科学読書ブログ

社会科学関係の書籍を紹介

中村佑子『マザリング』(集英社)

マザリング 現代の母なる場所 (集英社文芸単行本) 作者:中村佑子 集英社 Amazon 母であることの現象学。子を産むときの圧倒的な体験はあまり言語化されてこなかった。本書は、母であることについて多角的に言語化することを試みている。子を産んだ時、自分と…

ブレイディみかこ『ヨーロッパ・コーリング・リターンズ』(岩波現代文庫)

ヨーロッパ・コーリング・リターンズ: 社会・政治時評クロニクル 2014-2021 (岩波現代文庫 社会 330) 作者:ブレイディ みかこ 岩波書店 Amazon 本書は、著者がYahooなどの各媒体に発表した短い時評を年代別に編んだものである。扱っているのは主にイギリスの…

勤務時間中のスマホ

かつては、勤務時間中に携帯電話をいじっていると職務専念義務に違反するとして懲戒処分を受ける可能性すらあった。だが、スマホの高機能化により、勤務時間中にスマホを操作することが必ずしも職務専念義務に違反することにはならなくなっているのが近年の…

育てることで育つ

娘が産まれてから間もなく300日が経とうとしている。私はこれまで育児に携わってきたわけだが、まさに娘を育てることにより私自身も育っていると思う。 まずは人生の豊饒化である。一つには自らの血を引いた人間が一人生まれ出たということにかかわる喜び…

武井彩佳『歴史修正主義』(中公新書)

歴史修正主義-ヒトラー賛美、ホロコースト否定論から法規制まで (中公新書, 2664) 作者:武井 彩佳 中央公論新社 Amazon 主にホロコーストに関する歴史修正主義について入門的に書いた本。歴史修正主義には、政治体制の正当化や不都合な事実の隠蔽という政治…

前野ウルド浩太郎『バッタを倒しにアフリカへ』(光文社新書)

バッタを倒しにアフリカへ (光文社新書) 作者:前野 ウルド 浩太郎 光文社 Amazon ノンフィクション・エンターテインメント。昆虫学で博士号を取った著者が、自らの研究生命を保つためにアフリカへ旅立ち現地で奮闘する物語。一見するとアフリカの冒険譚のよ…

河野英太郎『社会人10年目の壁を乗り越える仕事のコツ』(ディスカヴァー)

社会人10年目の壁を乗り越える仕事のコツ〈若手でもベテランでもない中堅社員の教科書〉 作者:河野英太郎 ディスカヴァー・トゥエンティワン Amazon 若手でもベテランでもない、中堅職員としての10年目職員に向けたティップス。10年目職員の悩みに一つ一…

青木栄一『文部科学省』(中公新書)

文部科学省-揺らぐ日本の教育と学術 (中公新書 2635) 作者:青木 栄一 中央公論新社 Amazon 文部科学省の実態に迫った本。文部科学省は背後にいる官邸、政治家、他省庁、財界からの圧力に弱く、他方で教育界や国立大学には強い立場にある。外に弱く内に強いの…

明るく出る、明るくかける

今の部署で勤務していて学んだことは多岐にわたるが、その中で最もシンプルかつ最も重要なことは電話の出方である。今の部署では客から電話がかかってくることが結構多い。それも、良い内容よりは悪い内容の方が多い。クレームもしばしばある。だから、電話…

育児のつらさの正体

わが子は生後8か月でもうすぐ9カ月になる。私もまた父親として育児に携わったが、育児はなかなかつらいものである。抱っこしたり世話をしたりという介護労働的なつらさは確かにある。だがそれは労働としてのつらさである。睡眠不足になったり時間が自由に取…

林望『習近平の中国』(岩波新書)

習近平の中国――百年の夢と現実 (岩波新書) 作者:林 望 岩波書店 Amazon 習近平を中心として展開される中国現代史。習の前の胡錦濤国家主席の代では、先代の江沢民が院政を敷くことで中国共産党内部の軋轢を生み出していたため、胡錦濤は習に代を譲るときに完…

離席のススメ

職場で仕事をしていても、人間の集中力などしょせん限界がある。ものの本によると人間の集中力は15分単位でしか持続しないらしい。深い集中力は15分が限度で、15分単位で集中ができるとのこと。これは私も仕事をしていて実感するところで、だいたい3…

中西嘉宏『ロヒンギャ危機』(中公新書)

ロヒンギャ危機―「民族浄化」の真相 (中公新書) 作者:中西嘉宏 中央公論新社 Amazon ミャンマーの少数民族であるロヒンギャに対するジェノサイド疑惑に関して丁寧に叙述している。ロヒンギャとはラカイン州に住む無国籍のムスリム少数民族である。植民地期に…

坂倉昇平『大人のいじめ』(講談社現代新書)

大人のいじめ (講談社現代新書) 作者:坂倉昇平 講談社 Amazon 本書は職場におけるいじめやハラスメントについて、豊富な具体例をもとにその背後にある構造を探っている。最近のいじめは、過酷な労働環境の下で起こることが多く、職場全体が加害者化し、企業…

樹村みのり『冬の蕾』(岩波現代文庫)

冬の蕾――ベアテ・シロタと女性の権利 (岩波現代文庫) 作者:樹村 みのり 岩波書店 Amazon 日本国憲法のもととなったGHQ草案に男女同権の条項を盛り込んだベアテ・シロタの簡単な伝記。子どものころ日本で暮らした時に感じた日本人女性の地位の低さへの違和感…

水田洋『「知の商人」たちのヨーロッパ近代史』(講談社学術文庫)

「知の商人」たちのヨーロッパ近代史 (講談社学術文庫) 作者:水田 洋 講談社 Amazon グーテンベルクによる活版印刷技術の発明は、知識や文学を大衆に流布する技術の発明であり、その際知識を本の形で売る出版業者、「知の商人」たちを大量に生み出した。本書…

ウォーキングアプリについて

中年になってメタボ気味になって生活習慣病が心配。それでも食事量を減らすこともできないし運動もおっくう。確かに私もそうだった。筋トレやウォーキングも本格的に取り組むことができず、気づけば中年太りで体重が89kgに。私は身長が183cmあるか…

津止正敏『男が介護する』(中公新書)

男が介護する-家族のケアの実態と支援の取り組み (中公新書, 2632) 作者:津止 正敏 中央公論新社 Amazon 男性介護者の実態について書かれた本。介護する男性を「ケアメン」などと呼んだりして珍しいものだと思われがちだが、実際は介護している人口の三分の…

南相馬で6年働いて感じたこと

私は福島市で2年間働いたのち南相馬に赴任してそこで6年間業務に従事した。おそらく今回の異動でこの南相馬の地を離れると思うので、こちらの地で感じたことをまとめておく。 南相馬というと福島第一原発近くの都市であり、相双地方の中心都市であり、東日…

樹村みのり『彼らの犯罪』(岩波現代文庫)

彼らの犯罪 (岩波現代文庫 文芸 341) 作者:樹村 みのり 岩波書店 Amazon 本書は漫画という形式をとりながらも社会的な事件や問題を日常的な視点から多角的に洞察している。「女子高生コンクリート詰め殺人事件」に材をとった表題作から、宗教による洗脳の問…

子育て世代が想う日本の未来

親になってみて世の中の見方がだいぶ変わった。その一つとして、自分の子供が生きることとなる未来の日本社会に思いをはせるようになったことが挙げられる。今までは自分の世代のことだけを考えればよかった。確かに自分の世代でも日本の未来は厳しい。だが…

ハラスメント世代

今や会社組織だけでなく、スポーツ界や芸能界、芸術の界隈でも毎日のように世間をにぎわせているハラスメント問題。このハラスメント加害者の大部分が一定以上の年齢であることに気付かないだろうか。そう、一昔前まではハラスメントはごく普通に行われてい…

金澤周作『チャリティの帝国』(岩波新書)

チャリティの帝国 もうひとつのイギリス近現代史 (岩波新書) 作者:金澤 周作 岩波書店 Amazon 民間の非営利的な弱者救済活動であるチャリティ。イギリスではこれが非常に発達してきた。その歴史を追っている本。チャリティには3要素がある。①困っている人に…

沢渡あまね『職場の問題地図』(技術評論社)

職場の問題地図 ~「で,どこから変える?」残業だらけ・休めない働き方 作者:沢渡あまね 技術評論社 Amazon 残業を控えろ、でも仕事量は変わりません、さてどうするか。本書は現代の職場における時短要請と変わらない仕事量のジレンマを解決しようとする。…

デイヴィッド・ガーランド『福祉国家』(白水社)

福祉国家:救貧法の時代からポスト工業社会へ 作者:デイヴィッド・ガーランド 白水社 Amazon 福祉国家についての包括的で重厚な教科書。社会保障などを行う福祉国家は、近代的統治の根本的な一面であり、資本主義社会の経済の働きや社会の健康に不可欠のもの…

燃え殻『相談の森』(ネコノス)

相談の森 作者:燃え殻 ネコノス Amazon 流行作家である燃え殻が、仕事や恋愛など多種多様な人生相談に応えたもの。本書において著者は決して偉そうな態度をとらないし、物事を決めつけたりしない。それよりも、他人の人生へと想像力を働かせ、他人の言葉を傾…

小島庸平『サラ金の歴史』(中公新書)

サラ金の歴史 消費者金融と日本社会 (中公新書) 作者:小島庸平 中央公論新社 Amazon サラ金が日本において貧者のセーフティネットにまで進化してきた軌跡を追う。現代のサラ金の源流は、個人間金融で金融技術を鍛え上げた素人高利貸である。そこから団地金融…

ワーク・ライフの相関性

近年の若者はワーク・ライフバランス重視である。仕事も大事だがそれ以上にプライベートの時間を大事にする。また、仕事をしていても、よく「オン・オフの切り替え」とか「仕事は仕事、家庭は家庭」といったことを言われたりする。これらの考え方はすべて仕…

ジョオン・サースク『消費社会の誕生』(ちくま学芸文庫)

消費社会の誕生 ――近世イギリスの新規プロジェクト (ちくま学芸文庫) 作者:ジョオン・サースク 筑摩書房 Amazon 16~17世紀イギリスでのイノベーションについて記述している本。近世イギリスにおいては、既存の物の組み合わせによる新たな事業が発達し、…

イクメンになって直面したこと

男性の育休取得がだいぶ普及してきた。私もこの夏に育児休暇を1カ月取得し、その後も仕事をしながら育児に携わっている。だが、この「イクメン」を取り巻く状況は決してやさしいものではない。一つには、これまで世のママたちが背負ってきた苦労を共に背負…