社会科学読書ブログ

社会科学関係の書籍を紹介

2015-01-01から1年間の記事一覧

清水学『思想としての孤独』(講談社選書メチエ)

思想としての孤独―“視線”のパラドクス (講談社選書メチエ) 作者: 清水学 出版社/メーカー: 講談社 発売日: 1999/12 メディア: 単行本 クリック: 5回 この商品を含むブログ (3件) を見る 孤独とは、一般的には欠如・喪失・不在に伴うものだと思われている。他…

作田啓一『個人主義の運命』(岩波新書)

個人主義の運命―近代小説と社会学 (岩波新書 黄版 171) 作者: 作田啓一 出版社/メーカー: 岩波書店 発売日: 1981/10/20 メディア: 新書 クリック: 3回 この商品を含むブログ (2件) を見る 社会学の基礎は二者関係ではなく三者関係としてとらえられるべきであ…

辻清明『日本の地方自治』(岩波新書)

日本の地方自治 (岩波新書 青版 957) 作者: 辻清明 出版社/メーカー: 岩波書店 発売日: 1976/02/20 メディア: 新書 この商品を含むブログを見る 憲法や行政法で地方自治制度を学んだ人にとっては、大枠において特に新しく学ぶような点はないと思う。ただ、地…

井上達夫『現代の貧困』(岩波現代文庫)

現代の貧困――リベラリズムの日本社会論 (岩波現代文庫) 作者: 井上達夫 出版社/メーカー: 岩波書店 発売日: 2011/03/17 メディア: 文庫 購入: 1人 クリック: 34回 この商品を含むブログ (7件) を見る 本書は日本が直面している貧困を哲学する意図で書かれて…

今村仁司『現代思想の基礎理論』(講談社学術文庫)

現代思想の基礎理論 (講談社学術文庫) 作者: 今村仁司 出版社/メーカー: 講談社 発売日: 1992/12 メディア: ペーパーバック この商品を含むブログ (6件) を見る 今村が「現代思想」などの雑誌に寄稿した論文を集めたもの。論文集でありながら踏み込んだ意欲…

南原繁『人間と政治』(岩波新書)

人間と政治 (岩波新書 青版 131) 作者: 南原繁 出版社/メーカー: 岩波書店 発売日: 1953/05 メディア: 単行本 この商品を含むブログを見る 丸山眞男の師として有名な南原繁が東大で行った講演の中から厳選されたもの。とはいっても重複は多い。よく言えば主…

日高六郎『戦後思想を考える』(岩波新書)

戦後思想を考える (岩波新書 黄版 142) 作者: 日高六郎 出版社/メーカー: 岩波書店 発売日: 1980/12/22 メディア: 新書 購入: 3人 クリック: 4回 1980ねんにだされたほ件) を見る 1980年に出された本であるが、戦争の問題、戦後社会の問題、滅公奉私…

本村凌二『多神教と一神教』(岩波新書)

多神教と一神教―古代地中海世界の宗教ドラマ (岩波新書) 作者: 本村凌二 出版社/メーカー: 岩波書店 発売日: 2005/09/21 メディア: 新書 クリック: 16回 この商品を含むブログ (35件) を見る 本書は、古代において多神教から一神教へと人々の精神が変遷して…

大越愛子『フェミニズム入門』(ちくま新書)

フェミニズム入門 (ちくま新書 (062)) 作者: 大越愛子 出版社/メーカー: 筑摩書房 発売日: 1996/03 メディア: 新書 クリック: 20回 この商品を含むブログ (19件) を見る フェミニズムは近代自由主義思想のもと、「女性の自由・平等・人権」を求める思想とし…

加藤雅彦『ドナウ河紀行』(岩波新書)

ドナウ河紀行―東欧・中欧の歴史と文化 (岩波新書) 作者: 加藤雅彦 出版社/メーカー: 岩波書店 発売日: 1991/10/21 メディア: 新書 購入: 2人 クリック: 14回 この商品を含むブログ (7件) を見る ドナウ河流域の、東欧・中欧の歴史・風土について簡略に書かれ…

法制度と国民の意識の乖離

いくら法制度が変わっても、国民の意識が法制度通りに簡単に変わらないことはよくある。例えば、日本国憲法施行後も、とくに農村では旧来の家父長制イデオロギーは温存されたし、戦後の新しい民法が施行されても、対等で主体的な個人などというものは生活レ…

加藤雅彦『ライン河』(岩波新書)

ライン河―ヨーロッパ史の動脈 (岩波新書) 作者: 加藤雅彦 出版社/メーカー: 岩波書店 発売日: 1999/10/20 メディア: 新書 購入: 1人 クリック: 5回 この商品を含むブログ (1件) を見る ライン河を巡る独仏史。ライン河をめぐる絶え間ない紛争から、戦後のラ…

加藤節『南原繁』(岩波新書)

南原繁―近代日本と知識人 (岩波新書) 作者: 加藤節 出版社/メーカー: 岩波書店 発売日: 1997/07/22 メディア: 新書 購入: 3人 クリック: 11回 この商品を含むブログ (18件) を見る 南原の生涯の細かい点については読んでもらうことにして、彼の学問の要点を…

焦点化された歴史

編年体の通史には中心人物や中心事件が存在しない。人物や事件は相対化され、それぞれだいたい等しい重みでもって記述される。また、編年体の通史においては、出来事の解釈が平準化され、テーマというものが漠然としている。そこでは神の視点からの歴史記述…

鈴木範久『内村鑑三』(岩波新書)

内村鑑三 (岩波新書 黄版 287) 作者: 鈴木範久 出版社/メーカー: 岩波書店 発売日: 1984/12/20 メディア: 新書 この商品を含むブログを見る 伝記の役割としては、(1)それ自体が波乱に満ちた劇として読むに耐えること、(2)その人物の業績(著作など)の…

宇賀克也『地方自治法概説』(有斐閣)

地方自治法概説 第5版 作者: 宇賀克也 出版社/メーカー: 有斐閣 発売日: 2013/03/23 メディア: 単行本(ソフトカバー) この商品を含むブログ (3件) を見る 地方自治法の網羅的な体系書、の一言に尽きる。本格的な法律書の体裁を整えているので、地方自治法…

宇沢弘文『自動車の社会的費用』(岩波新書)

自動車の社会的費用 (岩波新書 青版 B-47) 作者: 宇沢弘文 出版社/メーカー: 岩波書店 発売日: 1974/06/20 メディア: 新書 購入: 11人 クリック: 145回 この商品を含むブログ (32件) を見る 自動車が市場を通さず社会に害をなす「社会的費用」について、宇沢…

自己決定権の相互譲渡

アルカイックな多くの社会においては、神々が人間を支配し、人間は神々の決定に身を任せ、さらには神々から権限を受け継いだ王の決定に身を任せていた。神々は人間にその存在そのものを贈与しているだけでなく、自然の恵みや天候などをも贈与しているのだか…

山脇直司『公共哲学とは何か』(ちくま新書)

公共哲学とは何か (ちくま新書) 作者: 山脇直司 出版社/メーカー: 筑摩書房 発売日: 2004/05 メディア: 新書 購入: 3人 クリック: 25回 この商品を含むブログ (50件) を見る 現在、公共哲学への関心が高まっている。それは、(1)「お上の公」でも「私益を…

樺山紘一『地中海』(岩波新書)

地中海―人と町の肖像 (岩波新書) 作者: 樺山紘一 出版社/メーカー: 岩波書店 発売日: 2006/05/19 メディア: 新書 クリック: 13回 この商品を含むブログ (24件) を見る 地中海をめぐる人と町の肖像。地中海を取り巻く世界を生きた12人を選び出し、二人一組…

主体なき政治

政治というものは様々な意味合いがあるが、基本的に支配権をめぐる争いだと考えておく。それは価値観を巡るイデオロギー闘争でもありうるし、文学作品の解釈をめぐる解釈論争でもありうるし、美術界における権威を巡る争いでもありうる。つまり、政治や経済…

六本佳平『法社会学』(有斐閣)

法社会学 作者: 六本佳平 出版社/メーカー: 有斐閣 発売日: 1986/02 メディア: ハードカバー この商品を含むブログを見る 法社会学の体系的で標準的な教科書であり、ひとまずこれを読んでおけば、より細分化された論点にも全体的な観点から位置づけを与える…

P.-M.シュル『機械と哲学』(岩波新書)

機械と哲学 (1972年) (岩波新書) 作者: P.-M.シュル,粟田賢三 出版社/メーカー: 岩波書店 発売日: 1972 メディア: 新書 この商品を含むブログ (1件) を見る 機械に対する人間の態度を歴史的に跡付けていった本。それほど深い哲学的洞察があるわけではないが…

社会的意識について

社会的意識とは、簡単に言うと、自己だけが世界の中心ではなくなるという意識である。自己に関係する利害だけに興味を持っている状態から、直接自己に利害的に関係しなくても、世の中に起こっている出来事に世界の中心を置き、その立脚点に立って世の中を見…

野田又夫『パスカル』(岩波新書)

パスカル (岩波新書 青版 145) 作者: 野田又夫 出版社/メーカー: 岩波書店 発売日: 1953/10/20 メディア: 新書 この商品を含むブログを見る パスカルの人生と思想をコンパクトにまとめた本。一般向けの入門書。パスカルは科学者でありながら宗教に関しても大…

本田和子『異文化としての子ども』(ちくま学芸文庫)

異文化としての子ども (ちくま学芸文庫) 作者: 本田和子 出版社/メーカー: 筑摩書房 発売日: 1992/12 メディア: 文庫 購入: 1人 クリック: 10回 この商品を含むブログ (3件) を見る 山口昌男の「中心ー周縁」論を、だいたいそのまま「大人ー子ども」の対立に…

孤独の定義

孤独とはなんであろうか。私は、孤独を「交易不全」として定義したい。人間は交易する存在であり、互いにモノや感情や情報をやり取りする存在である。ところで、人間が他人と接触する場合、たいていこの交易の成就を求めているのであるし、人間が交易する場…

被害者意識について

何か大きな被害を受けたとき、人間は損害を被る。それは物理的な損害でもあれば精神的な損害でもあるだろう。被害者は加害者からその完全性を奪われたわけであるから、加害者に対して完全性を補償せよと要求することができる。これは矯正的正義と呼ばれるも…

歴史を学ぶ意義

人間に与えられているのは、厳密に自分の人生のみである。他人の人生も与えられていると言われるかもしれないが、それは伝聞の域を出ず、他人の人生について体験の質は伴わない。繰り返すが、人間に与えられているのは、自分の唯一の人生のみである。だが、…

成熟と社会

個人の意識のありようが変わっていくことで、法制度や社会制度は漸進的に変わっていく。もちろん専門的な領域などそうでないところもあるだろう。だが、基本的に、この生きられた社会にこそ、社会のルールを決める源泉があり、その生きられた社会の価値観は…