社会科学読書ブログ

社会科学関係の書籍を紹介

2023-05-01から1ヶ月間の記事一覧

スズキナオ『深夜高速バスに100回ぐらい乗ってわかったこと』(スタンドブックス)

深夜高速バスに100回ぐらい乗ってわかったこと 作者:スズキナオ スタンド・ブックス Amazon ニッチな飲食店のレポートや、生活の中の些細な営みについてのエッセイ。基本的に有用性を志向しておらず、基本的に無駄なことが多い。役に立つことはあまりしてい…

岡本勝人『「生きよ」という声』(左右社)

「生きよ」という声 鮎川信夫のモダニズム 作者:岡本 勝人 左右社 Amazon 戦後詩壇で重要な位置にいた詩人・評論家の鮎川信夫に関する全般的な入門書。鮎川の複雑な詩は、矛盾を総合し重層的に決定するという反語的な要素を隠し持っている。そして、個人の幻…

働きすぎないために

日本は「過労死」という国際的な言葉を生み出してしまった仕事ファーストの時代を通過した。仕事第一主義、家庭や自らの健康は二の次、そのことによって、家事育児を負担する女性に過大な負担を課し、子どもの健全な発育に父親が関与せず、とりあえず仕事さ…

知の血管

私は様々な領域に関心を持っていて、日々読書を重ねたりウェブで情報を集めたりしている。また実際に自らが仕事や生活をしていくうえで経験することも多い。それらの行為は総じて、この世界に「知の血管」を張り巡らす行為である。 私は時間について多くを学…

会田雄次『アーロン収容所』(中公新書)

アーロン収容所 改版 西欧ヒューマニズムの限界 (中公新書) 作者:会田雄次 中央公論新社 Amazon 第二次世界大戦敗戦後イギリス軍の捕虜となった記録を詳細に描いている。捕虜としての極限的な生活や、現地人とのやり取り、イギリス人とのやり取りなど詳細に…

白石昌則『生協の白石さん』(講談社)

生協の白石さん 作者:白石昌則,東京農工大学の学生の皆さん 講談社 Amazon 東京農工大学の学生生協で、学生からの要望カードに生協職員が当意即妙に答えた記録。学生からのナンセンスな質問やふざけた質問に対して、ユーモアを交えながら寛容に答えている。…

なぜ公務員は保守的なのか

公務員には保守的な人が多い。これは私が地方公務員として勤務して得た実感である。旧例を重んじる。現状肯定的である。労働者としての権利を主張するよりも組織に従順であり、組織の利益を重んじる。 これには日本の公務員採用の仕方においてメリトクラシー…

エーリッヒ・フロム『愛するということ』(紀伊國屋書店)

愛するということ 作者:エーリッヒ・フロム 紀伊國屋書店 Amazon 愛とは衝動や性欲ではなく、成熟した人間による技術が必要だとするもの。人を愛するためには、ナルシシズムや近親相関的な愛着から脱却し、謙虚さと客観性と理性を育てなければならない。理に…

野村庄吾『乳幼児の世界』(岩波新書)

乳幼児の世界――こころの発達 (岩波新書) 作者:野村 庄吾 岩波書店 Amazon 乳幼児の発達について心理学の立場からまとめてある本。乳児の睡眠の特徴や、人間特有の笑い、手は口ほどにものをいうこと、共感と共鳴、贈与の関係、認知的機能の発達、考える力、関…

声をかけるということ

家庭でも仕事でも、様々な場面で相手に声をかけることが大事だったりする。それは、あなたに配慮しています、あなたに関心があります、あなたを気にかけています、そういうことを示すシグナルだからだ。 例えば育児中の妻が元気がないとする。どうやら幼児食…

小田久郎『戦後詩壇私史』(新潮社)

戦後詩壇私史 作者:小田 久郎 新潮社 Amazon 戦後間もないころの詩人と詩の出版社の状況を活写する活気に満ちた本。詩というとマーケットが狭く、それほど広く人口に膾炙していないのが実態である。そうでありながら、様々な詩人が様々な媒体で活躍している…

山形辰史『入門 開発経済学』(中公新書)

入門 開発経済学 グローバルな貧困削減と途上国が起こすイノベーション (中公新書) 作者:山形辰史 中央公論新社 Amazon 開発経済学の入門書。世界中のだれもが貧困や戦争、伝統的文化などで「理不尽な悲惨さ」に直面しうる。特に経済的に発展していない国ほ…

堀部政男『現代のプライバシー』(岩波新書)

現代のプライバシー (1980年) (岩波新書) 作者:堀部 政男 岩波書店 Amazon プライバシーの権利について書いてある本。1980年当時の本だが、現在に通じるような議論がなされている。プライバシーの権利については、消極的に「一人にしておいてもらいたい…