社会科学読書ブログ

社会科学関係の書籍を紹介

スズキナオ『深夜高速バスに100回ぐらい乗ってわかったこと』(スタンドブックス)

 ニッチな飲食店のレポートや、生活の中の些細な営みについてのエッセイ。基本的に有用性を志向しておらず、基本的に無駄なことが多い。役に立つことはあまりしていないことの記録なのであるが、それが大人の遊びとしてとても豊穣である。有用性はないかもしれないが、楽しくて豊かである。そんな生活の記録をつづっている。

 日ごろ私たちは社会の役に立つためにと思って仕事をしたり様々な生活を行っている。だが、その社会の役に立つことを一度捨象してみるのは良いのかもしれない。社会の役に立たなくても楽しいことや豊かなことはたくさんある。そんなことに気付かせてくれる本である。このような本を紹介するブログも、ある程度世の中に役立てばよいなと思って書いているが、そういう視点を捨ててしまってもよいのかもしれない。案外その方が読者を別の意味で楽しませ、別の意味で豊かになっていくのかもしれない。発想の転換が迫られる本だ。