社会科学読書ブログ

社会科学関係の書籍を紹介

倫理

橋本努『経済倫理=あなたは、なに主義?』(講談社選書メチエ)

経済倫理=あなたは、なに主義? (講談社選書メチエ) 作者:橋本努 講談社 Amazon 世の人々の価値観を大分類している本。従来の保守・リベラルなどとは異なった価値観の軸を提唱している。①行政の倫理:合意形成力、事務的有能さ、自発性、正直、節倹、規律、…

小川公代『ケアの倫理とエンパワメント』(講談社)

ケアの倫理とエンパワメント 作者:小川公代 講談社 Amazon ケアの精神を文学作品から読み解く試み。人間には連続的進行の「クロノス的時間」とは別の、経験に基づいた想像世界が育まれる「カイロス的時間」が流れている。ケア労働の背後にある内面世界にはカ…

戸谷洋志『親ガチャの哲学』(新潮新書)

親ガチャの哲学(新潮新書) 作者:戸谷洋志 新潮社 Amazon 親ガチャについての哲学的な議論。自分の人生が生まれたときの状況によって決定されており、あとからその運命を変えられないとする「親ガチャ的厭世観」がしばしばみられる。これは、自分の人生を自…

山口尚『人が人を罰するということ』(ちくま新書)

人が人を罰するということ ――自由と責任の哲学入門 (ちくま新書) 作者:山口尚 筑摩書房 Amazon 人が人を罰することに果たして意味はあるのか。罰することは無意味だとする理論への反論を提示している本。人を罰することは無意味であるとする議論がある。それ…

児玉真美『安楽死が合法の国で起こっていること』(ちくま新書)

安楽死が合法の国で起こっていること (ちくま新書) 作者:児玉真美 筑摩書房 Amazon 安楽死は確かに瀕死の人間の苦しみを取り除く意味で人間の「死ぬ権利」に資するが、それに歯止めが利かなくなると逆に人間の命を軽視することにつながるという問題提起をし…

玉手慎太郎『公衆衛生の倫理学』(筑摩選書)

公衆衛生の倫理学 ──国家は健康にどこまで介入すべきか (筑摩選書) 作者:玉手慎太郎 筑摩書房 Amazon 公衆衛生の倫理学について詳しく書かれている本。例えば肥満を防ごうなどといったように、政府の側からパターナリスティックに個人の健康について介入して…

戸谷洋志『友情を哲学する』(光文社新書)

友情を哲学する~七人の哲学者たちの友情観~ (光文社新書) 作者:戸谷 洋志 光文社 Amazon 友情とは何かについて様々な哲学者の見解を紹介している。アリストテレスは友情を自律的な個人の間の愛の関係としてとらえた。カントは友情を、自分の欲求ではなく道…

白石昌則『生協の白石さん』(講談社)

生協の白石さん 作者:白石昌則,東京農工大学の学生の皆さん 講談社 Amazon 東京農工大学の学生生協で、学生からの要望カードに生協職員が当意即妙に答えた記録。学生からのナンセンスな質問やふざけた質問に対して、ユーモアを交えながら寛容に答えている。…

エーリッヒ・フロム『生きるということ』(紀伊國屋書店)

生きるということ 新装版 作者:エーリッヒ・フロム 紀伊國屋書店出版部 Amazon 持つこと(to have)とあること(to be)を対比させながら、あるべき人間の姿を提示する本。あるべき人間の姿としては、①十全に「ある」ために、あらゆる「持つ」形態を進んで放…

杉田俊介『マジョリティ男性にとってまっとうさとは何か』(集英社新書)

マジョリティ男性にとってまっとうさとは何か #MeTooに加われない男たち (集英社新書) 作者:杉田俊介 集英社 Amazon 異性愛の多数派男性としての「マジョリティ男性」のまっとうさ(decency)について書かれた本。マジョリティ男性は既得権益を持ち、様…

竹内整一『日本人はなぜ「さようなら」と別れるのか』(ちくま新書)

日本人はなぜ「さようなら」と別れるのか (ちくま新書) 作者:竹内 整一 発売日: 2009/01/01 メディア: 新書 私たちは別れの言葉として「さようなら」を使う。それは極めて軽い日常のあいさつであることもあれば、もはや一生会うこともないだろうという万感の…

ナオミ・ザック『災害の倫理』(勁草書房)

災害の倫理: 災害時の自助・共助・公助を考える 作者:ザック,ナオミ 発売日: 2020/05/01 メディア: 単行本 災害についての応用倫理学を展開している本。災害については備えもまた倫理的に重要であり、災害計画における最善の原理は「最善の備えをして助けら…

長谷川宏『幸福とは何か』(中公新書)

幸福とは何か - ソクラテスからアラン、ラッセルまで (中公新書) 作者:長谷川 宏 発売日: 2018/06/20 メディア: 新書 長谷川は本書で幸福を、「穏やかで静かで身近なしあわせ」ととらえたうえで、様々な哲学者の幸福論を自らの幸福観と照らし合わせている。…

竹内整一『日本人は「やさしい」のか』(ちくま新書)

日本人は「やさしい」のか―日本精神史入門 (ちくま新書) 作者:竹内 整一 出版社/メーカー: 筑摩書房 発売日: 1997/07 メディア: 新書 「あの人は優しいから」「優しい人が好き」など、私たち日本人は頻繁に「やさしい」という言葉を使う。ところが、ではやさ…

河野哲也『善悪は実在するか』(講談社選書メチエ)

善悪は実在するか アフォーダンスの倫理学 (講談社選書メチエ (399)) 作者: 河野哲也 出版社/メーカー: 講談社 発売日: 2007/10/11 メディア: 単行本(ソフトカバー) 購入: 2人 クリック: 55回 この商品を含むブログ (24件) を見る 環境は人間を含む動物に…

小原信『孤独と連帯』(中公新書)

孤独と連帯 (1972年) (中公新書) 作者: 小原信 出版社/メーカー: 中央公論社 発売日: 1972 メディア: 新書 この商品を含むブログを見る 孤独と連帯にまつわる哲学的エッセイ。『異邦人』『変身』『人間失格』『こころ』、そしてソクラテスの生き方を題材に、…

竹内靖雄『経済倫理学のすすめ』(中公新書)

経済倫理学のすすめ―「感情」から「勘定」へ (中公新書)作者: 竹内靖雄出版社/メーカー: 中央公論社発売日: 1989/12メディア: 新書購入: 1人 クリック: 1回この商品を含むブログ (6件) を見る 本書は、あらゆる倫理問題を、稀少性をめぐる分配の問題という経…

児玉聡『功利と直観』(勁草書房)

功利と直観―英米倫理思想史入門作者: 児玉聡出版社/メーカー: 勁草書房発売日: 2010/11/26メディア: 単行本購入: 2人 クリック: 61回この商品を含むブログ (17件) を見る 本書は、倫理学における対立を、功利主義と直観主義との対立という観点から詳述してい…

高橋哲哉『デリダ』

デリダ (現代思想の冒険者たちSelect)作者: 高橋哲哉出版社/メーカー: 講談社発売日: 2003/07/11メディア: 単行本(ソフトカバー)購入: 3人 クリック: 32回この商品を含むブログ (48件) を見る 法というものは暴力によって成立する。妥当性を最終的に根拠づ…

今井道夫『生命倫理学入門』

生命倫理学入門 (哲学教科書シリーズ)作者: 今井道夫出版社/メーカー: 産業図書発売日: 2005/02メディア: 単行本購入: 2人 クリック: 21回この商品を含むブログ (6件) を見る 人が、受精して、胎児となり、生まれ、生き、病気にかかり、死ぬ、それぞれをあり…

パーソン論

胎児が「人」となる時期について、民法は全部露出説、刑法は一部露出説をとっている。「人」となれば、法文上「人」に与えられている利益が享受できるのだ。さらには、堕胎罪の保護法益は第一次的には胎児の生命である。刑法は胎児の生命まで保護しているの…

倫理的な懐疑

僕は最近、あらゆる価値を疑う状態になりました。快楽や成功や達成や栄光、すべて疑わしい。そうすると、生きていることが無意味に思えました。生きていることに価値がないのなら、生きていてもしょうがない。自殺という言葉も頭をよぎりました。 ですが、そ…

加藤尚武『現代倫理学入門』

現代倫理学入門 (講談社学術文庫)作者: 加藤尚武出版社/メーカー: 講談社発売日: 1997/02/07メディア: 文庫購入: 5人 クリック: 41回この商品を含むブログ (62件) を見る 我々が当たり前だと思っていて特に意識的に定式化していない判断原理を、ひとつひとつ…

規則功利主義

功利主義とは、最大多数の最大幸福こそが善だとする立場である。だが、最大多数の最大幸福を、一人一人の行為ごとに、それぞれの文脈において判断するのは難しい。一人一人の人間が行動を起こそうとするときに、善悪を判断する基準はもっと明確に定まってい…

善悪の決め方

ある行為が善か悪か決める場合、その行為がどの観点からみても善であれば問題がないが、ある意味善だがある意味悪だ、という場合に、行為自体が善か悪か決めるのは難しい。その場合どのようにして行為の善悪を決めるか。(1)善悪を計量化するやり方。たと…

行為

黒田亘「行為と規範」(勁草書房)がおもしろい。まずは行為の定義から始まる。行為概念はphysis(自然)を写し取るものではなく、nomos(人間間の約束事)で定まっている。「行為」という言葉は自然に存在する事物を記述するのではなく、その意味は人間が「…

危害原則

大庭健「「責任」ってなに?」によると、危害原則とは、「他人に危害を加えない限り何をしようと自由であり、他人に利益をもたらす責任はない」という原則である。危害原則によれば、責任はもっぱら他人に危害を加えたことから生じる。危害原則の背後には、…

respons-ability,blam-ability

大庭健は「「責任」ってなに?」(講談社現代新書)において、責任とはrespons-abilityすなわち「呼応可能性」であり、呼びかけに対して適切な反応を返してくるという「関係」のことである、と書いている。つまり、責任は主観的なものというより間主観的な関…