社会科学読書ブログ

社会科学関係の書籍を紹介

2023-07-01から1ヶ月間の記事一覧

バジョット『イギリス国制論』(岩波文庫)

イギリス国制論 (上) (岩波文庫 白 122-2) 作者:バジョット 岩波書店 Amazon イギリス国制論 (下) (岩波文庫 白 122-3) 作者:バジョット 岩波書店 Amazon イギリスの君主制及び議院内閣制の利点について詳しく述べている本。国制には尊厳的部分と実効的部分…

宇佐見英治『明るさの神秘』(みすず書房)

明るさの神秘 作者:宇佐見 英治 みすず書房 Amazon 主に宮沢賢治について書かれた批評的エッセイ集。宮沢賢治のいう心象スケッチは、時間の中で書かれたものではなく、時間そのものの相貌であり、この呼吸を言い表すために四次元世界・四次元芸術という言葉…

宇佐美・志村『一茎有情』(ちくま文庫)

一茎有情―対談と往復書簡 (ちくま文庫) 作者:英治, 宇佐見,ふくみ, 志村 筑摩書房 Amazon 詩人の宇佐見英治と染織家の志村ふくみの対談集である。詩人である宇佐美がその卓抜なる感性でもって志村の言葉を引き出していき、志村の染織家としての実践と、その…

河合隼雄『子どもの宇宙』(岩波新書)

子どもの宇宙 (岩波新書) 作者:河合 隼雄 岩波書店 Amazon 子どもは未熟な存在だと思われがちだが、実は内部に広大な宇宙を持っている。その宇宙において、秘密を軸にして、家族や動物、時空、老人、死、異性と関わっていく。そのような他者とのかかわりが子…

疲労との付き合い方

疲れたら休むしかない。そうしないと病気になってしまう。体調を崩す前にきちんと休むのが一番賢い疲れのマネジメントだ。疲れを無視して無理に働いたりすると様々な体調の悪化をもたらす。それは高血圧だったり、憂鬱だったり、腹痛だったり、頭痛だったり…

笠井亮平『第三の大国 インドの思考』(文春新書)

第三の大国 インドの思考 激突する「一帯一路」と「インド太平洋」 (文春新書) 作者:笠井 亮平 文藝春秋 Amazon 現代インドの国際関係について紹介している本。2023年にも人口は世界一になるとされ、経済規模でも世界五位、軍事費も世界三位となっていて…

富岡多恵子『表現の風景』(講談社)

表現の風景 (講談社文芸文庫) 作者:富岡多惠子 講談社 Amazon 詩人である富岡多恵子のエッセイ集。話題は多岐にわたり、障碍者用のダッチワイフの話から私小説の話、女性の地位の話などさまざまである。単純な表現論に終わるのではなく、社会問題へのまなざ…

鈴木大拙『東洋的な見方』(岩波文庫)

新編 東洋的な見方 (岩波文庫) 作者:鈴木 大拙 岩波書店 Amazon 鈴木大拙が晩年に執筆したエッセイ。西洋は主体と客体に二元化し、一般化・概念化・抽象化する。東洋は分割的知性を持たず、主客未分化であり、「光あれ」という刹那に触れようとする。また、…

鈴木志郎康『結局、極私的ラディカリズムなんだ』(書肆山田)

結局、極私的ラディカリズムなんだ―鈴木志郎康表現論エッセイ集 (Le livre de luciole) 作者:鈴木志郎康 書肆山田 Amazon 主に個人映画について紹介しているエッセイ集。「個人映画」とは、映画会社などの資本により制作されるのではなく、個人があたかも詩…

戸谷洋志『友情を哲学する』(光文社新書)

友情を哲学する~七人の哲学者たちの友情観~ (光文社新書) 作者:戸谷 洋志 光文社 Amazon 友情とは何かについて様々な哲学者の見解を紹介している。アリストテレスは友情を自律的な個人の間の愛の関係としてとらえた。カントは友情を、自分の欲求ではなく道…

あるサラリーマンの一日

朝は大体2時か3時くらいに目が覚める。それから、出勤のために家を出る5時半まで、本を読んだり、文章を書いたり、スマホで情報をチェックしたり、スマホゲームをしたり、音楽を聴いたり、朝食を食べたりして過ごす。ゴミの日にはゴミ出しをする。いつも…

関口洋平『「イクメン」を疑え!』(集英社新書)

「イクメン」を疑え! (集英社新書) 作者:関口洋平 集英社 Amazon イクメンを称揚することの問題点について、アメリカ映画をもとに紐解いていく本。男性の育児参加が進むのは喜ばしいことだが、イクメンの表象はしばしば「男はつらいよ」「男性が被害者」と…

中村正史『東大生のジレンマ』(光文社新書)

東大生のジレンマ~エリートと最高学府の変容~ (光文社新書) 作者:中村 正史 光文社 Amazon 東大生というと、かつては官僚志望者が多く、実際に官僚になる者も多かった。官僚でなくとも、大企業などの安定した仕事に就く者が圧倒的に多かった。だが今や時代…

絲屋寿雄『管野すが』(岩波新書)

管野すが―平民社の婦人革命家像 (岩波新書 青版 740) 作者:絲屋 寿雄 岩波書店 Amazon 大逆事件にかかわり死刑となった婦人革命家の評伝。言論の自由も結社の自由もなく、普通選挙もなく、専制的な天皇制の日本で、いまだ労働組合すら組織されていない状況で…

平澤・中村『ワークライフ・インテグレーション』(ミネルヴァ書房)

ワークライフ・インテグレーション:未来を拓く働き方 ミネルヴァ書房 Amazon ワークライフインテグレーションに関する論文集。資本主義の発達により、労働者の長時間労働が常態化するにあたり、仕事と家庭との両立が社会問題となった。家事育児に父親が参加…

スヴェトラーナ・アレクシエーヴィチ『セカンドハンドの時代』(岩波書店)

セカンドハンドの時代――「赤い国」を生きた人びと 作者:スヴェトラーナ・アレクシエーヴィチ 岩波書店 Amazon ソ連崩壊の衝撃を市井の人々から語ってもらっているノンフィクション。資本主義の導入により、生活が豊かになると同時に自分でお金を稼がなければ…