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鈴木志郎康『結局、極私的ラディカリズムなんだ』(書肆山田)

 主に個人映画について紹介しているエッセイ集。「個人映画」とは、映画会社などの資本により制作されるのではなく、個人があたかも詩を書くように、撮影対象を身近なところに求めて自分が生きているありかを語る作品である。それは既存の映画に対するアンチテーゼとして、実験的・前衛的であることが多く、普通の映画に慣らされた私たちの感性を刺激するものである。

 鈴木はNHKで撮影を担当していた。自らも、ジョナス・メカスなどの影響を受けて個人映画を撮り、それを私的に上映していた。この個人映画というものが、詩というジャンルとかなり近接性があるのである。メジャーに流布した感性に対して、個人独特の感性を対峙させるもの。商業的でないがゆえに自由に表現できるもの。大きな物語ではなく、極めて私的な小さな物語を描くもの。映画における詩がまさに個人映画なのだろう。