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戸谷洋志『友情を哲学する』(光文社新書)

 友情とは何かについて様々な哲学者の見解を紹介している。アリストテレスは友情を自律的な個人の間の愛の関係としてとらえた。カントは友情を、自分の欲求ではなく道徳法則にしたがう自律的な個人同士の関係としてとらえた。アリストテレスとカントはともに自分が友人を理解できることを前提としたが、ニーチェは友達同士はわかりあえないと説いた。ニーチェにとってはライバルとしての友情が重要であった。ヴェイユは、重力と恩寵というキーワードで友情をとらえ、ギブアンドテイクの重力ではなく一方的に与える恩寵の友情を説いた。ボーヴォワールは抑圧された女性の解放される地平としての友情を唱え、フーコーは友情と恋愛の区別や異性愛にとらわれない友情を説いた。マッキンタイアは自律性を依存なしには成立しないものととらえた。

 友情の哲学の入門書。友情についての見解もそれぞれの哲学者の理論を前提としていて、それぞれの哲学者のバックボーンに触れることともなる。友情と一言で言っても多様な側面があり、それに応じて様々な見解がある。とりあえず、友情について考える際に極めて参考になる書物だと思う。特に、依存なしに自律性はないという見解にはすごく納得する。おすすめである。