社会科学読書ブログ

社会科学関係の書籍を紹介

2024-04-01から1ヶ月間の記事一覧

藤田正勝『日本哲学入門』(講談社現代新書)

日本哲学入門 (講談社現代新書) 作者:藤田正勝 講談社 Amazon 「日本思想」ではなく、「日本哲学」の入門書。哲学の受容から始まり、西田幾多郎や坂部恵や田辺元などの思想を紹介している。西洋に特権的に「哲学」が存在するのではなく、日本にも固有の「哲…

孤独なクレーマー

行政職員をやっていると様々なクレームを受ける。そのクレームが自分の担当する事務や所管する事務に関するものだったら速やかに対応するのみだ。だが、中にはほとんど自分の担当事務と関係のない案件について切々とクレームを訴える人もいる。端的にクレー…

後藤正治『清冽』(中公文庫)

清冽 - 詩人茨木のり子の肖像 (中公文庫 こ 58-1) 作者:後藤 正治 中央公論新社 Amazon 茨木のり子の生涯を描いた初の評伝。茨木は家柄もよく容姿にも恵まれながら、柔らかく、でありながら毅然とした態度で戦争などの日本社会の動きと対峙した。「倚りかか…

清水俊史『ブッダという男』(ちくま新書)

ブッダという男 ――初期仏典を読みとく (ちくま新書) 作者:清水俊史 筑摩書房 Amazon ブッダ研究の論点がわかるスリリングな本。我々がブッダの教えを解釈する際、どうしても現代においても有意義であってほしいというバイアスがかかり、現代の価値観を先取り…

本間・中原『会社の中はジレンマだらけ』(光文社新書)

会社の中はジレンマだらけ~現場マネジャー「決断」のトレーニング~ (光文社新書) 作者:本間 浩輔,中原 淳 光文社 Amazon 経営学者の中原淳と、ヤフーの上級執行役員が、日本の職場をめぐる多様な論点について対談している本。話題は、上司が部下に仕事を振…

情報公開担当職員を2年やって気づいたこと

1.量の多さ 近年、情報公開制度が国民に広く知られるようになったため、公文書開示請求や保有個人情報開示請求の件数は増加の一途をたどっている。それをすべて把握するため、仕事量は多い。さらに、それに比例するように不開示決定等に対する審査請求の数…

石垣りん『詩の中の風景』(中公文庫)

詩の中の風景-くらしの中によみがえる (中公文庫 い 139-2) 作者:石垣 りん 中央公論新社 Amazon 石垣りんが近現代詩を一篇ずつ紹介しているエッセイ集である。素朴ながらも心を打つ詩が多く紹介されていて、読んでいて心から感情があふれ出しそうになる。石…

橋本努『自由原理』(岩波書店)

自由原理 来るべき福祉国家の理念 作者:橋本 努 岩波書店 Amazon 福祉国家の根本原理について考察した本。福祉国家の理念については様々なものが挙げられる。①福祉国家以前に存在した愛徳の理念で共同体の外側を包摂するもの、②ロックによる個人的所有権に基…

原俊彦『サピエンス減少』(岩波新書)

サピエンス減少 縮減する未来の課題を探る (岩波新書 新赤版 1965) 作者:原 俊彦 岩波書店 Amazon 日本だけでなく世界全体もいずれは人口減少に直面し人類は消滅に向かっていくという見取り図を提示する衝撃の本。人口学の専門家が著した本なので信憑性は高…

木村忠正『デジタルネイティブの時代』(平凡社新書)

デジタルネイティブの時代 作者:木村忠正 平凡社 Amazon 質的研究と量的研究を掛け合わせて行われたデジタルネイティブの研究。デジタルネイティブとは、デジタル技術に青少年期から本格的に接した世代のことで、1980年前後以降生まれの世代のことである…