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清水俊史『ブッダという男』(ちくま新書)

 ブッダ研究の論点がわかるスリリングな本。我々がブッダの教えを解釈する際、どうしても現代においても有意義であってほしいというバイアスがかかり、現代の価値観を先取りをしていたといった解釈がなされがちである。だが実際には、ブッダは業と輪廻の実在を信じていたし、一般社会での階級の区別を是認していたし、女性が男性より劣っていると信じていた。ブッダはあくまで当時の歴史的条件によって限定されていたのである。

 ブッダはこうあってほしいとか、ブッダは先進的であったとか、我々はそんな望みを託してブッダの教えを読みがちである。本書はそのようなバイアスが真のブッダ像をゆがめることに警鐘を鳴らしている。ブッダについて様々な論点が示されていて、ブッダ研究の入門書ともなるであろう。とにかく楽しく読めた。