社会科学読書ブログ

社会科学関係の書籍を紹介

2023-08-01から1ヶ月間の記事一覧

明日香壽川『グリーン・ニューディール』(岩波新書)

グリーン・ニューディール 世界を動かすガバニング・アジェンダ (岩波新書) 作者:明日香 壽川 岩波書店 Amazon グリーン・ニューディールという世界的な動きについて解説している。再生可能エネルギーについてはコモディティ化が進んでおり、すでに多くの国…

櫛原克哉『メンタルクリニックの社会学』(青土社)

メンタルクリニックの社会学: 雑居する精神医療とこころを診てもらう人々 作者:櫛原克哉 青土社 Amazon メンタルクリニックの来歴や現状についてまとめた博士論文ベースの本。メンタルクリニックの患者は、自身の苦悩と向き合うとき、紆余曲折し、自分が本当…

中森弘樹『「死にたい」とつぶやく』(慶應義塾大学出版会)

「死にたい」とつぶやく 作者:中森弘樹 慶應義塾大学出版会 Amazon 座間9人殺害事件を思考の端緒に、親密圏における「死にたい」という発言の意味を考察している。家族や親しい友人といった親密圏においては、基本前提が「生きたい」という欲求であり、その…

村上靖彦『客観性の落とし穴』(ちくまプリマー新書)

客観性の落とし穴 (ちくまプリマー新書) 作者:村上靖彦 筑摩書房 Amazon 客観性を追い求めることで却って不可視化されるものに焦点を当てよ、という本。科学は、自然を数値化し、社会を数値化し、心を数値化した。それによりすべてが「モノ」化し、人々は数…

デューイ『民主主義と教育』(岩波文庫)

民主主義と教育 上 (岩波文庫) 作者:J. デューイ 岩波書店 Amazon 民主主義と教育 下 (岩波文庫) 作者:J. デューイ 岩波書店 Amazon デューイの教育論。本書の根本的な教育原理は、最も充実した生活こそ最も良い教育になるということである。我々の生活には…

斎藤環『母は娘の人生を支配する』(NHKブックス)

母は娘の人生を支配する なぜ「母殺し」は難しいのか NHKブックス 作者:斎藤 環 NHK出版 Amazon 「父殺し」は容易なのに「母殺し」が非常に困難であることについての解説。特に母と娘の関係について考察している。男性が「立場」を求めるのなら、女性は「…

桑瀬章二郎『ジャン=ジャック・ルソー』(講談社現代新書)

今を生きる思想 ジャン=ジャック・ルソー 「いま、ここ」を問いなおす (講談社現代新書) 作者:桑瀬 章二郎,ジャン=ジャック・ルソー 講談社 Amazon 常識を問い直す人としてのルソーの紹介。ルソーの思想は複数の知の領域にまたがっており、「政治」「自由」…

斎藤美奈子『出世と恋愛』(講談社現代新書)

出世と恋愛 近代文学で読む男と女 (講談社現代新書) 作者:斎藤美奈子 講談社 Amazon 近代文学を類型化して読み解く試み。近代日本の青春小説は、三つの要素からなっている。①主人公は地方から上京してきた青年である。②彼は都会的な女性に魅了される。③しか…

三谷はるよ『ACEサバイバー』(ちくま新書)

ACEサバイバー ――子ども期の逆境に苦しむ人々 (ちくま新書 1728) 作者:三谷 はるよ 筑摩書房 Amazon ACEとは、Adverse Childhood Experienceのことで、子ども時代の逆境的な体験のことを言う。ACEとして挙げられているものは、身体的虐待、心理的虐待…

玉手慎太郎『公衆衛生の倫理学』(筑摩選書)

公衆衛生の倫理学 ──国家は健康にどこまで介入すべきか (筑摩選書) 作者:玉手慎太郎 筑摩書房 Amazon 公衆衛生の倫理学について詳しく書かれている本。例えば肥満を防ごうなどといったように、政府の側からパターナリスティックに個人の健康について介入して…

平林敏彦『言葉たちに』(港の人)

言葉たちに 戦後詩私史 作者:平林 敏彦 港の人 Amazon 詩人平林敏彦の詩歴や交遊録をつづったもの。戦後詩壇において大きな存在感を持ちながら、30年間沈黙し、その後また詩作を再開した著者の来歴が記されている。また、戦後詩壇における様々な詩人との交…