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平林敏彦『言葉たちに』(港の人)

 詩人平林敏彦の詩歴や交遊録をつづったもの。戦後詩壇において大きな存在感を持ちながら、30年間沈黙し、その後また詩作を再開した著者の来歴が記されている。また、戦後詩壇における様々な詩人との交友が記されている。基本的に資料的価値のある本なのだと思う。冒頭のエッセイは文学的価値が比較的高いと思われるが、内容はありきたりであり、むしろ私などは積極的に反論したくなる類のものだ。

 詩が青春や抵抗にダイレクトに結び付けられることには、私はかなりの違和感を持っている。熟年や老年の詩もあるし、抵抗よりも受忍している詩もある。私ぐらいの歳になるとむしろその手の詩の方に味わいを感じてくるのである。詩が若さや革命と安易に結び付けられることで、詩の奥深さや寛容さが見えなくなってしまうと思うのだ。まあ、若さや革命がもてはやされる時代もかつてはあったし、その時代の名残なのだろうから、平林個人を批判するものではない。