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バジョット『イギリス国制論』(岩波文庫)

 イギリスの君主制及び議院内閣制の利点について詳しく述べている本。国制には尊厳的部分と実効的部分があり、双方があって初めてうまく機能する。イギリスにおいては君主制が国の尊厳的部分を担い、国民の感情的な崇敬の念を抱かせ、国としてのまとまりを生み出している。一方で、実効的部分においては議院内閣制をとっており、議会と内閣が緊密な連携をとっているため、社会の変化に迅速に対応でき、租税なども適切に課税できる。これが大統領制だと、立法府と行政府が独立しているため、迅速な意思決定ができない。

 19世紀イギリスの、国王・内閣・議会の連関について詳細に論述している本である。読みやすいが内容は論理的であり、含蓄に富んでいる。これだけイギリスの王制と議院内閣制の本質を早い段階から論述していたのだからまさに古典の名に値する。考察が深くて細かくて正確である。貴重な読書体験だった