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スヴェトラーナ・アレクシエーヴィチ『セカンドハンドの時代』(岩波書店)

 ソ連崩壊の衝撃を市井の人々から語ってもらっているノンフィクション。資本主義の導入により、生活が豊かになると同時に自分でお金を稼がなければいけなくなった、その喜びと戸惑い。一方では資本主義を歓迎する声が上がり、他方では共産主義の方がよかったという声が上がる。共産主義ソ連の人たちのアイデンティティとなっていた部分があり、ソ連の人々は革命の闘士たちを英雄視していた。そういった声も聞こえてくる。また、ソ連時代の理不尽な逮捕とか強制労働についても多くの人たちが語っている。ソ連は恐怖国家でもあったのだ。

 共産主義が失敗したかどうかはよくわからない。ソ連とは別の仕方で共産主義を作ることは可能だったのかもしれない。人々がより豊かにより幸せに暮らせる共産主義もあったのかもしれない。資本主義と共産主義の対立は容易に語れるものではなく、本書を読んで私も問題の大きさに言葉を失ってしまうほどだ。ただ、ソ連崩壊というのはまさしく象徴的で絶大な事件であり、それについて自分なりの意見をまとめてみたいものだ。