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平澤・中村『ワークライフ・インテグレーション』(ミネルヴァ書房)

 ワークライフインテグレーションに関する論文集。資本主義の発達により、労働者の長時間労働が常態化するにあたり、仕事と家庭との両立が社会問題となった。家事育児に父親が参加できないなどして、女性への負荷が高まり、また労働者も疲弊していった。そこで、ファミリーフレンドリーな施策などが展開され、ワークライフバランスが提唱された。だが、ワークライフバランスにおいて仕事と生活が対立的にとらえられていることを乗り越え、ワークライフインテグレーションにおいては、少子化対策子育て支援に加え、高齢者の活用、キャリアアップを目指す若者を含めた幅広い働き方改革となっている。ワークライフインテグレーションは、仕事と生活を柔軟かつ高次元で統合し、相互を流動的に運営して相乗効果を発揮し、生産性・成長拡大を実現し、生活の質を上げ、充実感と幸福感を得ることを目的とする。

 働き方についての議論はもはやここまで進んでいる。だが、日本ではいまだワークライフバランスですら満足に機能していないように感じる。だから少子化が一向に止まらないのである。まず、少子化対策としてのワークライフバランスを徹底的に取り入れ、そのうえでワークライフインテグレーションを取り入れていくというステップをとる必要がある。少子化は日本にとって深刻な問題である。それを完全に克服し、さらに労働者の幸福を実現する方向にもっていければ望ましい。