社会科学読書ブログ

社会科学関係の書籍を紹介

政治学

佐藤卓己『あいまいさに耐える』(岩波新書)

あいまいさに耐える ネガティブ・リテラシーのすすめ (岩波新書) 作者:佐藤 卓己 岩波書店 Amazon 輿論主義を唱える筆者が、その実現のために必要なネガティブ・リテラシーを提唱している本。世論は世間の評判・多数意見であるが、輿論は各種の意見を尊重し…

チャールズ・カプチャン『ポスト西洋世界はどこへ向かうのか』(勁草書房)

ポスト西洋世界はどこに向かうのか: 「多様な近代」への大転換 作者:チャールズ・カプチャン 勁草書房 Amazon 西洋が覇権を握っていた時代は終焉し、多様な近代が世界秩序を構成するだろうとする本。欧米は、民主主義・資本主義・世俗ナショナリズムという原…

中井遼『ナショナリズムと政治意識』(光文社新書)

ナショナリズムと政治意識~「右」「左」の思い込みを解く~ (光文社新書) 作者:中井 遼 光文社 Amazon ナショナリズムと政治的な左右とのかかわりについて論じた本。ナショナリズムとは、文化を共有する人々を身分や階級を超えて一つの集まりとして結び付け…

郭四志『脱炭素産業革命』(ちくま新書)

脱炭素産業革命 (ちくま新書) 作者:郭四志 筑摩書房 Amazon 気候変動などの抑止に向けたカーボンニュートラルの推進のための最近の技術革新について詳細に解説している。CO2削減のため、洋上風力発電の拡大、燃料アンモニア産業の拡充、水素を利用した技術開…

バジョット『イギリス国制論』(岩波文庫)

イギリス国制論 (上) (岩波文庫 白 122-2) 作者:バジョット 岩波書店 Amazon イギリス国制論 (下) (岩波文庫 白 122-3) 作者:バジョット 岩波書店 Amazon イギリスの君主制及び議院内閣制の利点について詳しく述べている本。国制には尊厳的部分と実効的部分…

エマニュエル・トッド『第三次世界大戦はもう始まっている』(文春新書)

第三次世界大戦はもう始まっている (文春新書) 作者:エマニュエル・トッド 文藝春秋 Amazon ウクライナ戦争の分析を通じて見えてくる現代の世界地図。そもそもロシアは父権性の強い社会であり、権威主義体制になじむが、ウクライナは父権性が弱く、権威主義…

将基面貴巳『愛国の起源』(ちくま新書)

愛国の起源: パトリオティズムはなぜ保守思想となったのか (ちくま新書, 1658) 作者:将基面 貴巳 筑摩書房 Amazon 日本語の「愛国」の語源となったパトリオティズムについて歴史的に解読している本。パトリオティズムには、自国への愛という狭義の愛国の側面…

デイヴィッド・ガーランド『福祉国家』(白水社)

福祉国家:救貧法の時代からポスト工業社会へ 作者:デイヴィッド・ガーランド 白水社 Amazon 福祉国家についての包括的で重厚な教科書。社会保障などを行う福祉国家は、近代的統治の根本的な一面であり、資本主義社会の経済の働きや社会の健康に不可欠のもの…

キア・ミルバーン『ジェネレーション・レフト』(堀之内出版)

ジェネレーション・レフト (Zブックス) 作者:キア・ミルバーン 堀之内出版 Amazon 世界の若者たちの左傾化現象について述べた本。若者たちは上の世代との世代間格差に気付いている。若者たちはもはや上の世代のような潤沢な生活を送れないし、気候変動などの…

岩崎育夫『アジア政治を見る眼』(中公新書)

アジア政治を見る眼 開発独裁から市民社会へ (中公新書) 作者:岩崎育夫 発売日: 2014/07/11 メディア: Kindle版 アジア諸国がほぼ一様に開発独裁から市民社会へという道筋をたどったことへの理論的説明がなされている。 独立直後の東アジア諸国は政治、経済…

エリカ・フランツ『権威主義』(白水社)

権威主義:独裁政治の歴史と変貌 作者:エリカ・フランツ 発売日: 2021/01/30 メディア: 単行本(ソフトカバー) 民主主義の対極にある独裁制などの権威主義について書かれた体系書。権威主義とは競争的な民主主義が成立していない独裁制などのことである。 権…

吉田徹『アフター・リベラル』(講談社現代新書)

アフター・リベラル 怒りと憎悪の政治 (講談社現代新書) 作者:吉田徹 発売日: 2020/09/16 メディア: Kindle版 現代世界においてはリベラル・デモクラシーが後退している。リベラル・デモクラシーは70年代をピークとする分厚い中間層に支えられていたが、9…

蔭山宏『カール・シュミット』(中公新書)

カール・シュミット-ナチスと例外状況の政治学 (中公新書) 作者:蔭山 宏 発売日: 2020/06/22 メディア: 新書 ドイツの政治学者でナチに加担したカール・シュミットの入門書。カール・シュミットは「例外」に基礎をおいて理論を展開している。「例外」とは極…

川端康雄『ジョージ・オーウェル』(岩波新書)

ジョージ・オーウェル――「人間らしさ」への讃歌 (岩波新書) 作者:川端 康雄 発売日: 2020/07/18 メディア: 新書 『動物農場』や『一九八四年』で、個人の自由の制限や監視社会化に警鐘を鳴らすようなディストピア小説を書いたジョージ・オーウェルの生涯と作…

デヴィッド・グレーバー『民主主義の非西洋起源について』(以文社)

民主主義の非西洋起源について:「あいだ」の空間の民主主義 作者:デヴィッド・グレーバー 発売日: 2020/04/22 メディア: 単行本 民主主義は西洋に起源を持つ、というのが定説のように唱えられてきた。特に古代ギリシアのアテネに由来するというのが大方の見…

詫摩佳代『人類と病』(中公新書)

人類と病 国際政治から見る感染症と健康格差 (中公新書) 作者:詫摩佳代 発売日: 2020/05/15 メディア: Kindle版 国際的な保健協力の観点から人類と病との関わりを読みといたもの。病に対する国際協力体制を「国際保健」「グローバルヘルス」という。国際保健…

植村和秀『ナショナリズム入門』(講談社現代新書)

ナショナリズム入門 (講談社現代新書) 作者:植村 和秀 発売日: 2014/05/16 メディア: 新書 本書はナショナリズムを定義づけたうえで、そのダイナミズムを世界各国の具体例を通して説明している。ナショナリズムとは、まとまった土地を確保しそこに歴史を積み…

谷口・宍戸『デジタル・デモクラシーがやってくる!』(中央公論新社)

デジタル・デモクラシーがやってくる! -AIが私たちの社会を変えるんだったら、政治もそのままってわけにはいかないんじゃない? (単行本) 作者:谷口 将紀,宍戸 常寿 発売日: 2020/03/06 メディア: 単行本 本書は、情報技術が政治にどのような影響を与えるかに…

宇野重規『未来をはじめる』(東京大学出版会)

未来をはじめる: 「人と一緒にいること」の政治学 作者:宇野 重規 発売日: 2018/09/27 メディア: 単行本 本書は中高生を相手になされた政治学の講義の記録である。「異なる者同士が共にいること」を政治の出発点として、共にいることの諸態様、友人関係であ…

軽部謙介『官僚たちのアベノミクス』(岩波新書)

官僚たちのアベノミクス――異形の経済政策はいかに作られたか (岩波新書) 作者:軽部 謙介 出版社/メーカー: 岩波書店 発売日: 2018/02/21 メディア: 新書 政府が何らかの政策を打ち出すと、新聞で結果だけを読んでいる我々としては、あたかも総理大臣が単独で…

久米郁男『労働政治』(中公新書)

労働政治ー戦後政治のなかの労働組合 (中公新書 (1797)) 作者:久米 郁男 出版社/メーカー: 中央公論新社 発売日: 2005/05/26 メディア: 新書 労働組合に加入している労働者は多いと思う。最近組織率が低下しているとはいえ、依然労働組合は労働者の待遇改善…

前田健太郎『女性のいない民主主義』(岩波新書)

女性のいない民主主義 (岩波新書) 作者: 前田健太郎 出版社/メーカー: 岩波書店 発売日: 2019/09/21 メディア: 新書 この商品を含むブログを見る 政治学の通説をジェンダーの観点から読み直す画期的な本。 「男性は男らしく、女性は女らしくなければならない…

國分・山崎『僕らの社会主義』(ちくま新書)

僕らの社会主義 (ちくま新書 1265) 作者: 國分功一郎,山崎亮 出版社/メーカー: 筑摩書房 発売日: 2017/07/05 メディア: 新書 この商品を含むブログ (8件) を見る 哲学者の國分功一郎とコミュニティデザイナーの山崎亮が初期社会主義について対談したもの。 …

矢内原忠雄『日本精神と平和国家』(岩波新書)

日本精神と平和国家 (岩波新書 赤版 100) 作者: 矢内原忠雄 出版社/メーカー: 岩波書店 発売日: 1946/01/01 メディア: 新書 この商品を含むブログを見る 終戦後の矢内原の伝道活動としての講演を二本収録している。 ①本居宣長の系譜を継ぐ日本主義者は、神の…

船橋洋一『シンクタンクとは何か』(中公新書)

シンクタンクとは何か-政策起業力の時代 (中公新書) 作者: 船橋洋一 出版社/メーカー: 中央公論新社 発売日: 2019/03/16 メディア: 新書 この商品を含むブログを見る 公共政策を提言する研究機関であるシンクタンクについて概説したもの。 シンクタンクとは…

加藤節『ジョン・ロック』(岩波新書)

ジョン・ロック――神と人間との間 (岩波新書) 作者: 加藤節 出版社/メーカー: 岩波書店 発売日: 2018/05/23 メディア: 新書 この商品を含むブログ (3件) を見る ジョン・ロックの思想を神学的な観点からとらえなおす意欲作。 ロックの思想は複雑であるがその…

吉見俊哉『トランプのアメリカに住む』(岩波新書)

トランプのアメリカに住む (岩波新書) 作者: 吉見俊哉 出版社/メーカー: 岩波書店 発売日: 2018/09/21 メディア: 新書 この商品を含むブログ (2件) を見る 2017年から1年間著者がハーバード大学で教鞭をとった際にアメリカの現状を眺めてしたためた随想…

近藤康史『分解するイギリス』(ちくま新書)

分解するイギリス: 民主主義モデルの漂流 (ちくま新書 1262) 作者: 近藤康史 出版社/メーカー: 筑摩書房 発売日: 2017/06/06 メディア: 新書 この商品を含むブログ (5件) を見る イギリスの伝統的な安定的な政権が現在どのように変化してきたかについて記述…

ヤン=ヴェルナー・ミュラー『憲法パトリオティズム』(法政大学出版局)

憲法パトリオティズム (叢書・ウニベルシタス) 作者: ヤン=ヴェルナーミュラー,斎藤一久,田畑真一,小池洋平,安原陽平,根田恵多,菅沼博子 出版社/メーカー: 法政大学出版局 発売日: 2017/09/20 メディア: 単行本 この商品を含むブログを見る 憲法パトリオティ…

ヤン=ヴェルナー・ミュラー『ポピュリズムとは何か』(岩波書店)

ポピュリズムとは何か 作者: ヤン=ヴェルナー・ミュラー,板橋拓己 出版社/メーカー: 岩波書店 発売日: 2017/04/19 メディア: 単行本 この商品を含むブログ (5件) を見る 時代を席巻するポピュリズムとはいったいどういうものかについて詳説した本。 ポピュリ…