本書はナショナリズムを定義づけたうえで、そのダイナミズムを世界各国の具体例を通して説明している。ナショナリズムとは、まとまった土地を確保しそこに歴史を積み重ね他者からの認知をを獲得して形成されたネーションへのこだわりである。ネーションの形成の仕方には、人間集団単位と地域単位があり、人間集団単位でネーションを形成すると地域が分断され、地域単位でネーションを形成すると人間集団が分断されるなどの困難さが生じる。
本書は多数の国家のネーション形成の歴史を追うことによってネーション形成の多様性を示しているが、確かに一つの国を作り上げるということはとてつもなく複雑で困難なことなのだと思う。ナショナリズム間の争いなどについても簡単に触れられてはいるが、基本的には人間集団単位と地域単位のネーション形成のせめぎあいについて多くの紙幅が割かれている。ナショナリズムを基本から理解するのに適した本だと思う。