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蔭山宏『カール・シュミット』(中公新書)

 

  ドイツの政治学者でナチに加担したカール・シュミットの入門書。カール・シュミットは「例外」に基礎をおいて理論を展開している。「例外」とは極限の事例であり、政治における「例外状況」とは現行の法秩序が停止される状況を意味し、ときには人々の生死が危機に瀕する状況を指す。緊迫した「例外状況」における「決断」こそが政治の本質であり、その「決断」が政治的秩序を保証する。カール・シュミットは、決断の主体として「独裁」を重視しており、独裁体制も国民の意思を反映しており民主主義的である。例外状況における独裁者による決断こそが優れて政治的なのである。

 カール・シュミットの思想はナチに親和的であり、実際ナチの御用学者として活躍した時期もある。だが、それは現実的な問題であって、理論面からみた場合、彼の理論は政治理論としてかなり特異で興味深いものをはらんでいる。例外状況に着目し、そこから出発した政治理論というものは少ないだろう。政治的なるものとはなんであるか考えた場合、彼の思想はかなりクリティカルなものを含んでいると思われる。