福祉国家についての包括的で重厚な教科書。社会保障などを行う福祉国家は、近代的統治の根本的な一面であり、資本主義社会の経済の働きや社会の健康に不可欠のものである。福祉国家はデュルケムのいう「正常な社会的事実」であり、比較可能な発展段階に達した社会には必ず存在し、そのような社会の働きと結合し必要不可欠となっている。資本主義経済と競争的市場は格差の拡大や社会的弱者の取りこぼしを必然的に生み出すが、それを緩和するために福祉国家のレジームは必要不可欠なのである。
現代において福祉国家はもはや所与のようになっているが、その世界的な歴史や構造について詳細に論じた包括的な著作である。福祉国家については新自由主義の立場から、経済の発展を阻害するとかモラルハザードを引き起こすなどの批判が向けられているが、結局資本主義社会を維持するためには福祉国家のレジームが根本的に必要なのである。福祉国家の個々の政策について書かれた本はよく目にするが、ではそもそも福祉国家とは何かというそもそも論は初めて読んだ。重厚で読み応え抜群の好著である。