政治学者が自らの学問人生を振り返って、そこでアジアについて感じたことをつづった自伝的エッセイ。アジアは文明の後発地域として捉えられてきて、中でも韓国は常に後塵を拝してきた。アジアの中で日本は唯一の先進国として国際社会でも影響力を持ったが、その他の東アジアの国々は最近まで先進国として捉えられてこなかった。韓国出身である著者の複雑な思いがつづられる。著者はウォーラーステインの世界システム論に救済を得る。そこには西洋とアジアの格差を固定するのではなく相対化する視点があったからだ。
政治学者が自ら学問を追求していく中で出会ったアジアの問題。それについて理論的な考察がなされているわけではないが、それについて率直に感じたことが書かれている。まずはこの違和感を表出することが大事であろう。理論構成や具体的な行動はここを起点にして今後行われていくであろう。なかなか楽しく読めた。