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枝廣淳子『好循環のまちづくり!』

 

  著者の前著『地元経済を創りなおす』を受けた実践編。まちづくりには三段階がある。ホップとしては、バックキャスティングで未来の望ましい街の姿を描くこと。現状に基づいて何ができるかというフォーキャスティングではなく、いきなり理想像を設定し、そこへ向かう方法を考えるバックキャスティングでないと理想には近づけない。

 ステップとしては現状の構造を理解し望ましい好循環を描くこと。「人口が増える」「町が活性化する」など様々な事象は相互に相関関係にあり、その相関関係の構造を良い方向に循環させるのが正しい街づくりである。現在の街のあり方がどのような構造にあるかを理解したうえで、その構造を好循環させるのである。

 ジャンプとしては、悪循環を断ち好循環を強めるプロジェクトを立案すること。本質的で効果的な施策を生み出さなければこれまでの検討の結果はむなしくなる。そのために、行政任せにせず、町の人たち自ら立ち上がり、適切な指標で効果を図りながら街づくりを行っていく必要がある。

 本書は、確固たる理論的基礎に基づいて具体的な街づくりの方策を提言している。実際に著者はこの方法に基づいて街づくりを成功させている。ここで改めて気づかされるのは理論の重要性である。著者はバックキャスティングやシステム思考、レジリエンスなどといった理論を熟知しているがゆえにこのような実践的な考えを導き出すことができた。理論と実践はやはり不即不離であり、理論なき実践がいかに困難であるかがわかる。