公共工事はバラマキであるとか不平等であるとか箱モノを作るだけとか批判されてきたが、それは公共工事によって生み出される公共空間が十分魅力的でないことからくるのだと思う。本書は様々な公共空間の創出に実際に携わった著者がその実践例を多く紹介している本である。
公共空間整備のポイントとして、柴田は①日常性、②波及性、③継続性の三つを挙げる。日常性とはいかに普段から使われる場所となりうるか、波及性とは整備された施設を拠点としながら周辺への回遊が促されること、継続性とは維持管理が可能なように設計することである。そのうえで柴田は、景観工学の知見を取り入れる。魅力ある景観が眺められる場所が用意されることで、そこへの来訪者が増え、賑わいや経済的活性化につながる。
本書を読んで、公共空間を整備するときにこれだけのことが考慮されているということに驚いた。また、地域を巻き込んだ綿密な打ち合わせやワークショップを行い、地元の意向を取り入れた町づくりが行われていることにも驚いた。公共空間の整備に当たっては、それが地域を活性化する起点となるような多彩な努力が必要不可欠なのである。