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千葉雅也『勉強の哲学』(文春文庫)

 

 

 学校を出て仕事に就いてからも、いろいろと見識を深めたいと思う人は多いだろう。だが、いざ勉強をするとなると、どこから手をつけていいか分からないし、どんな本を読んだらいいか分からない。結局気持ちだけで実際に勉強するまでは至らないケースが多いのではないだろうか。

 千葉雅也『勉強の哲学』(文春文庫)は、そのような大人たちへの格好の勉強マニュアルである。千葉によると、勉強とはそれまで自分が自明視していたノリから別のノリへと移ることであり、そこには既存の自分を破壊することが伴う。たとえば仕事のノリから社会学のノリへ移る際、不慣れな言葉の使い方に注目し、言葉の新たな可能性へ自らを開いていく。そして、勉強とはそれまでの自明な環境へのツッコミ・アイロニーであり、そこから見方の多様化(ボケ、ユーモア)へと接続していく必要がある。実際に勉強を始めるに当たっては、身近なところから問題を見つけ、そこからキーワードを探し出し、そのキーワードを扱う専門分野のノリへ引っ越すことが大事である。そうして、入門書からはじめて専門書を読みこんでいき、適当なところでまた他の分野のノリへと引っ越す。

 テレビで流れる表層的な知識では飽き足らず、またテレビで流れるニュースだけでは飽き足らず、より深く物事を考えていきたい。その際、どのように勉強していったらいいか。千葉の本書は大人のための勉強法を示すものであり、多くの人の役に立つと思われる。