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岡田一郎『革新自治体』(中公新書)

 

  革新自治体についてよくまとまった入門書。1960年代から70年代に、左派の首長が全国各地で誕生した。特に、高度経済成長に伴うひずみである、公害の発生や社会資本の未整備、社会福祉の立ち遅れなどに主に大都市が直面し、それらへの対策に取り組んだ左派の政党に支持が集まったのである。これは、中道政党が革新寄りになったから可能になった。1979年以降革新陣営は後退していくが、これは中道政党をひきつけるのに失敗したからである。

 本書は社会党史の専門家が書いた革新政党のあらましであり、社会党革新政党との関連について多く記述されている。だが、全体的にバランスよく重厚に論じられており、高度成長期の日本の課題は何だったのか、そして真の課題に取り組む政党こそが支持されるという民主主義の基本を再確認させられる。確かに革新政党の時代、民主主義や政党はそれなりに機能していたのではないだろうか。そのあたりの問題系にも思いをはせることができる。