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魔のポスト

 あなたの組織にも存在しないだろうか、「魔のポスト」が。そのポストには質的に高度で量的にも大量な仕事が要求され、そのポストに就いた人はたいてい心身の健康を害するかその前に辞めていくかいずれかである、そういうポストがないだろうか。

 私はそういう魔のポストを渡り歩いてきたと言ってもいい。まず一箇所目では、私も採用二年目だったこともあり、またそのポストのひどさも際立っており、私は心を病んで休職してしまった。私には「仕事ができない」というレッテルが貼られた。私の後任を係長レベルの人が継いだが、その人も散々怒られ搾り上げられ、挙句の果てに左遷された。

 二箇所目も高度な質と量が求められるポストだったが、いろいろ理不尽な目にあいつつ、「あいつは駄目だ」とか言われつつ、何とか三年勤めあげて異動した。ところが私の後任は心の健康を害し一年で辞めてしまったし、その後任も疲労困憊して一年で辞めた。その次の年になって、そのポストはようやく二人体制になり問題はなくなった。

 三箇所目はもともと嘱託員と二人体制でやるポストのはずが、人員不足により嘱託員がやるような単純作業もやらざるを得ないポストで、そこでも私はずいぶん悪口を言われた。

 こういう「魔のポスト」は、そこに配属されてしまえば散々苦労しても報われないという理不尽なポストである。場合によっては心身の健康を害したり仕事をやめざるをえなかったりといった人生を狂わせられる可能性のあるポストである。だが、問題は単純に一人で賄いきれない質量の業務を一人でやっているという構造的なものにすぎない。それは当然どこかで破綻するわけだが、破綻の責任はそのポストにいる人に着せられ、そのポストの構造的な問題へ皆の注意は向かない。事務分掌に問題があるのに、その問題が個人の資質の問題にすり替えられ、「あいつはできない」「あいつは駄目だ」などのレッテル貼りがなされる。

 組織にいると声を上げることが難しい。質量とも無理なポストに配属されても、声を上げれば一層自分が悪いことにされる。だが、そこは敢えてひるまずに声を上げてほしいのだ。特に、こういう「魔のポスト」に配属されてしまったときには、自分が限界を迎える前に必ず助けを求めてほしい。上層部には賢明な方々がいるはずだから、きっとあなたの大変さを理解してくれるし、事務分掌も改善され負担が減るだろう。上層部は現場のことをあなたが思うほどはわかっていないのだから、あなた自身が声を上げて実態を訴えないことには大変さがわからないのだ。私が経験した二か所目のポストのように、人員増で全く問題がなくなることだって十分にあるのだ。何も大変な思いをして周りからもひどく言われ、それに耐えている必要はない。できないならできないとはっきり言うこと。無理して頑張らないこと。さもないとあなたの人生は簡単に狂わされてしまう。構造的な問題には構造的に対処しないと解決は不可能なのだ。あなた個人の「頑張り」でどうこうできるものではないのである。