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藤高和輝『バトラー入門』(ちくま新書)

 クイア理論の基礎付けとみなされるようになったジュディス・バトラーの入門書。バトラーは、セックスとジェンダーと欲望の連続性、つまり、女性だったら女性らしく振舞い、男性を愛するようになるといった連続性を、社会的あるいは政治的なものとみなし、それは実は原理的に不連続なものなのだと主張する。女性であっても男性らしく振舞い、女性を愛してもいい。そして、ジェンダーをなくすのではなく、現にある多種多様なジェンダーを肯定しよう、ジェンダーを増やそうと主張する。

 すでにLGBT等については様々な著作が出版され、私もいろいろと理論を学んだが、バトラーはそれらの現代の理論の先駆けとなったというか基礎付けを作ったという感じがする。バトラーはLGBT等の運動にとって、理論的に非常に強力な基礎付けを作り、理論的な後押しをしたのである。理論と実践が不可分であることは個の例からもわかるだろう。強力な理論があるからこそ安心して実践することができるのである。