社会科学読書ブログ

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福間良明『「勤労青年」の教養文化史』(岩波新書)

 戦後の昭和20年代・30年代、高度経済成長期に、中卒や高卒で就職しなければいけない若者たちがたくさんいた。そういった若者たちは、働きながら、定時制高校で学んだり、青年会などの地域組織で教養を積んだり、人生雑誌を読んだりそこに投稿することで教養を深めていった。中学校は就職組と進学組に分かれ、就職組による鬱屈した心情などが背後にあり、反知性主義的知性主義とでもいう現象があった。つまり、既成の知的権威は認めないが自らの知性は磨いていきたいという心情である。これらの教養文化も、進学率が向上するなどして徐々に衰退していった。

 私の父母は、実家が貧しくて大学へ行けなかった人たちが集う大学講座という組織に入っていた。これは、実際に大学教授が顧問となり、生徒に課題を課して生徒がレポートを提出しそれを採点するという仕組みだった。大学講座はそれなりの組織であり、私の父母はその組織で知り合い結婚した。学校に行けなくても学びたい、教養を身につけたいという気持ちは昔から連綿とあるのだと思う。ましてや貧しさなどの不可抗力で学べなかった人の学ぶ意欲は強いものがある。その精神は今も生きていると思う。