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デューイ『民主主義と教育』(岩波文庫)

 デューイの教育論。本書の根本的な教育原理は、最も充実した生活こそ最も良い教育になるということである。我々の生活には充実した瞬間が少なく、教育には無駄が多い。そうではなく、生活を充実させることが最も人を成長させるのである。また、個人の生命には集団の生命が先立つ。個人的意識には普遍的意識が先立つ。生命とは本来集団的・全体的なものである。人間が社会的に育つとは、人間を社会の鋳型にはめるのではなく、主体的に環境を制御する能力を可変的に成長させていくことである。そして、思考は常に行動と関連付けられる。思考は個人的なもので過程的なものである。

 なかなか観念的な話が多く、久しぶりに本格的な哲学書を読んだ気分になった。原理原則から始まり、起源から始まり、そこから議論を論理的に展開していくということ。そもそも哲学とはこういうものであった。デューイについては初めて原典を読んだがそれほど読みやすいものではない。ただ、章ごとに要約がついているのがよかった。鑑賞や美的体験を重視するのも面白かった。教育とはここまで原理的で哲学的なものなのだ。