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上野正道『ジョン・デューイ』(岩波新書)

 

 プラグマティストで進歩主義思想家であるジョン・デューイの入門書。デューイは主体・客体などといった二元論を克服し、相互の信頼・正義に向けて多様な市民の権利と自由を保障し、開かれた多元的な社会の形成を意図した。また、デューイは子どもたちが批判的に思考し、表現し、対話する学びを取り入れ、家庭・地域・自然科学などに開かれ、アクティブな学びや探究的な学びをするような教育改革を提唱した。デューイは「コモン・マン」、つまり一般の人が世の中でよりよく生き、よりよく学ぶことでよりよい社会を作ることを目指していた。

 デューイの思想はかなり進歩主義的で先進的である。現代、デューイが意図していたような教育がまさに実践されていることを考えれば、彼の先見の明は明らかであろう。その背景としてプラグマティズムがあったことは重要である。真理は可謬的であること、行為によって真理は変化していくこと、この意識はやはり重要ではないか。これは現代の教養論とも呼応するものがあり、ただ古典を読んでいればいいというのはもはや時代遅れで、もっと実践的な教養が求められている。偉大な思想家だったことがわかる。