社会科学読書ブログ

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斎藤環『母は娘の人生を支配する』(NHKブックス)

 「父殺し」は容易なのに「母殺し」が非常に困難であることについての解説。特に母と娘の関係について考察している。男性が「立場」を求めるのなら、女性は「関係」を求める。母は娘を「コミュニケーションの地獄」で支配する。母と娘は互いに網の目のように強く深く結びついており、個々人の変化がすぐに全体の変化へ結びつく。母は娘の幸福に行き過ぎた関心を抱いている。母は娘をずっと子ども扱いする。葛藤が存在しても表面的な調和を目指そうとする。このように、母と娘の強力な関係性により、母殺しは極めて難しい。

 母と娘の関係について、私はあまり読んでこなかった。だが、かなり入り組んでいて複雑な関係性がそこにはあるのだと本書を読んでいて徐々にわかってきた。もちろんこの本は男性による母殺しの困難性についても触れている。だが、息子と母の関係は、娘と母の関係とはだいぶ違うように感じられる。読んで有意義だった。