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石田光規『孤立の社会学』(勁草書房)

 

孤立の社会学: 無縁社会の処方箋

孤立の社会学: 無縁社会の処方箋

 

  無縁社会の実態をデータベースで分析し、それに対する処方箋を示したもの。

 無縁社会孤独死が問題となっているが、これは労働市場からの排除、地域からの排除、家族からの排除、医療からの排除などから成る社会的排除の一例であり、また親密圏の変化にも依存している。

 人々は、血縁・地縁・会社縁から解放されて息苦しさから脱したいと思う一方、その開放によって生じる新たな連帯はそれほど確保されず、そこから生ずる不安は従来のシステムによって回避したいという都合のいい考えを持つようになっている。

 情緒的サポートの供給源として家族は重要な機能を果たしており、中でも婚姻関係の役割は重要である。だが、男性は人間関係の構築に不得手であり、配偶者への依存度が強いのに対し、女性は配偶者以外の人間関係の構築により幅広い情緒的サポートを得ている。

 今後の連帯の方向性としては、行政サービスによって家族関係のほころびを補うセーフティネットの役割が期待される。

 本書は、現代社会が直面している人々の孤立についての社会学的分析である。孤立は社会的排除の複合して出来上がるものであるが、一度排除された人間を人間関係のネットワークに取り戻すことも大事だが、そもそも排除が起きないように予防することも大事だと思われる。その点で、私としてはやはり自立した個人による創発的ネットワークの構築に期待したい。