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鴻上・佐藤『同調圧力』(講談社現代新書)

 

 日本社会の息苦しさを生み出している同調圧力について分析した本。同調圧力とは「みんなと同じに」という命令であり、日本は世界でも同調圧力が突出して高い国である。同調圧力は多数派の価値観を押し付け少数者を排除しようとする。そして同調圧力を生み出しているのが世間なのである。

 世間と社会は異なる。社会は契約関係や個人主義、平等性や合理性が支配するのに対し、世間は互酬関係や集団主義、排他性や非合理性が支配する。日本人は世間によってがんじがらめに縛られてきていて、世間が本音で社会は建前になっている。世間のルールは4つある。お返しのルール、身分制のルール、人間平等主義のルール、呪術性のルールである。

 私などは大学院で法律を学んだため、どちらかというと世間に属しているというよりは社会に属している意識が強い。世間の非合理性や排他性が鬱陶しくて、何事も合理的に平等に処理したがる。だから、私などは日本社会の中では多少浮いた存在であり、排除の対象となりやすい存在だと思う。だが、そういう個人主義の人間ほど、少しずつ周りに影響を与え、日本の同調圧力の強さを少しでも弱める方向へと働きかけ、分断と排除を生み出す世間の力を弱めることができる。とても興味深い対談だった。