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鈴木大拙『東洋的な見方』(岩波文庫)

 鈴木大拙が晩年に執筆したエッセイ。西洋は主体と客体に二元化し、一般化・概念化・抽象化する。東洋は分割的知性を持たず、主客未分化であり、「光あれ」という刹那に触れようとする。また、西洋は父性的であるのに対し、東洋は母性的である。だが、西洋的知性には限界があり、分割は有限である。有限即無限ということで、無限と有限が一体化している、そういう渾然とした一なるものに創造性が宿るのである。西洋の哲学が外に向かうのに対して、東洋の哲学はうちに向かい、生活に即している。

 東洋思想については碩学であった鈴木大拙の思想のエッセンスが詰まった良エッセイである。難しいことも解きほぐしてわかりやすく書いている。ある意味大拙入門であり、また東洋思想入門でもあるだろう。西洋思想が行き詰まりを迎えようとしている現在、東洋思想の豊かさに立ち返ってもよいのかもしれない。大拙の著作をもっと読みたいと思わせる本だった。