様々な哲学者によるユダヤに関する思想を入門的に集めたもの。
ユダヤにとって無限と向き合うことは重要である。無限と有限という橋渡しできないものを架橋し、人知を超えた無限に人間の生活を適合させようとする不可能な業が文字であり言語であり解釈であった。
ユダヤにとって、非存在としての輪郭線や境界として生きること、抗争とパラドクスの舞台であることは本質的である。それであるからこそ平和の思想が生まれる。
ユダヤは法の下に生活の全体を位置づけ、「散在体(ディアスポラ)」をも選び取り、数々の強力な異端を生み出し、表面的背教を選び取り、非道な侵略者のレッテルを貼られながら生きてきた。
ユダヤというものについては聖典があり宗教があり、また数多くの哲学者が論じてきた。このユダヤという深遠についての、本書はささやかな入門書であるが、それでも十分重厚で難解である。本書では様々な哲学的思惟のさわりしか書かれていないため、原典に当たり理解を深める必要がある。それにしてもユダヤというもの、それもまた無限であり人知の及ばない莫大なものなのかもしれない。