「無常」をテーマとして日本文化を論じた本。
出家の道と詩歌の道との相克で悩んだ西行。人間の悪を直視し、悪人であるからこそ救われるとした親鸞。世の名誉などはすべてむなしいから遁世しようとした鴨長明・吉田兼好。能を極めながら「花」という美学を展開した世阿弥。わび・さびを追求した芭蕉。
これらの日本文化を代表する人たちは、この世は儚くすべては移ろいゆくという無常観を共有していた。日本文化には通奏低音としてこの無常感が流れている。西田幾多郎はこういった各国特有の文化を世界に開いていき、世界文化を活気づけることを企図していた。
本書は日本文化の形成に当たって重要な役割を果たした人たちの思想を取り上げ、それらを概観したもので、それぞれの思想家の入門書的役割を果たしている。日本文化においてはやはり無常観というものが重きをなしているようで、たとえば自分自身のものの考え方にもそれは影を落としているように感じる。なかなかおもしろかった。