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三谷はるよ『ACEサバイバー』(ちくま新書)

 ACEとは、Adverse Childhood Experienceのことで、子ども時代の逆境的な体験のことを言う。ACEとして挙げられているものは、身体的虐待、心理的虐待、性的虐待、身体的ネグレクト、心理的ネグレクト、親との別離、近親者間暴力、親との別離、家族のアルコール・薬物乱用、家族の精神疾患・自殺、家族の服役である。このACEスコアが高い人ほど、エピジェネティック(後天的な遺伝子の発現状況)に、心身の疾患や問題行動が生じやすくなるという研究結果が出ている。

 また、新たな社会問題が可視化されてきたように思う。このように、社会問題を適切に取り上げ、研究し対策を講じることは、社会全体の利益のために有益である。「毒親」などといったキーワードで語られることが多い問題だが、ACEはあくまで被害者の主観を問わず客観的に状況を把握する。自分の子どもにACEを体験させないようにしないといけないと強く思った。