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関口洋平『「イクメン」を疑え!』(集英社新書)

 イクメンを称揚することの問題点について、アメリカ映画をもとに紐解いていく本。男性の育児参加が進むのは喜ばしいことだが、イクメンの表象はしばしば「男はつらいよ」「男性が被害者」という主張と結びつく。それが女性やフェミニズムへの批判を内在させているとすれば問題がある。女性のつらさにも寄り添うなど公平な立場をとるべき。また、男性育児の背後には新自由主義的な思想が見え隠れする。新自由主義のもと、何でも自己責任にされ、「企業家」としての個人としてイクメンが称揚され、イクメンになることが可能なエリート男性だけをほめたたえるのは、弱い男性や社会的地位の低い男性などが存在する社会全体を視野に入れていない。

 確かに、誰もが「イクメン」になれるわけではない。大企業のホワイトカラーなら男性も育児休業もとれるだろうが、中小企業では人手不足により育児休業が取れないという話も聞く。また、仕事もやり育児もやりというのは、本当にスーパーマン的な能力が必要とされるものであり、私も現在イクメンをやっているが、激務に携わりながら育児もやるということは相当大変である。超人的な能力が必要である。そこまでできる人は限られている。単純にイクメンを称揚していればいいものではないということだ。