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中村正史『東大生のジレンマ』(光文社新書)

 東大生というと、かつては官僚志望者が多く、実際に官僚になる者も多かった。官僚でなくとも、大企業などの安定した仕事に就く者が圧倒的に多かった。だが今や時代は異なる。東大生の就職先で一番多いのは外資系コンサルであり、官僚になる人は大幅に減っている。また、起業する人もかなり増加しており、休学して村おこしや海外での実際の体験を積み重ねる人もかなり増加している。東大生の親は基本的に安定志向だが、時代の変化とともに、東大生は起業したり実体験を積むことで、社会を変革していく主体になろうとしている。

 東大生の現在を描いている本。優秀な学生たちは、旧令墨守の大企業よりも、より革新的なベンチャーなどの起業に携わっている。時代が何を求めているかを鋭敏に察知して、日々イノベーションに励んでいる。優秀な学生こそ起業すると言われている。時代は大きく変わった。私も東大生だったが、結局安定志向で収まってしまった。安定志向には安定志向のチャレンジがあり、決して起業することに劣るものではないと考えるが、やはり安定志向なりの縛りが強く、自由度はあまり感じられない。まあ、だが家族を支えるとなるとやむなしかとも思う。