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宇佐美・志村『一茎有情』(ちくま文庫)

 詩人の宇佐見英治と染織家の志村ふくみの対談集である。詩人である宇佐美がその卓抜なる感性でもって志村の言葉を引き出していき、志村の染織家としての実践と、その実践から感じ取った様々なことが語られていく。お互い優れた感性の持ち主同士が、一方では言葉の実践、他方では染織の実践において感じることを交差させていく。そこでは、色の問題、その深さや生死とのかかわり、風や光とのかかわり、染織に用いる植物に関する思いなど、たくさんの言葉が費やされている。

 優れた感受性の持ち主同士であり、また優れた創作の実践者同士であるこの二人の組み合わせはとても面白い。そこからあらわになってくる文学というものや染織というもの、そこから感じ取られる卓抜な洞察、それらがとても刺激的である。フィールドの異なる二人が接点を持つことで、お互いに微妙に影響されていく、その過程も見ものである。良い企画を実現してくれた。