社会科学読書ブログ

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河合隼雄『子どもの宇宙』(岩波新書)

 子どもは未熟な存在だと思われがちだが、実は内部に広大な宇宙を持っている。その宇宙において、秘密を軸にして、家族や動物、時空、老人、死、異性と関わっていく。そのような他者とのかかわりが子どもの宇宙を豊かにするが、その前提としてそもそもが子どもの宇宙は極めて広大なのだ。子どもにとって秘密は自らのアイデンティティの柱となるものであるが、一方でそれを打ち明けることも重要な意味を持つ。子どもの宇宙の広がりについて、心理療法の実践や文学作品をもとに考えていく本である。

 子どもを育てていると、その発想の豊かさに驚かされることがよくある。我々大人は常識にまみれてしまっていて自由な発想ができなくなっている。だが子どもはそのような既成概念にとらわれない自由なアイディアで遊びを生み出す。そして子どもは本当に無限の宇宙を内に秘めているような敬意を払うべき存在である。子どもは大人以上に大人なのではないかと感じることすらある。非常に豊かな読書体験だった。