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笠井亮平『第三の大国 インドの思考』(文春新書)

 現代インドの国際関係について紹介している本。2023年にも人口は世界一になるとされ、経済規模でも世界五位、軍事費も世界三位となっていて、近年国際関係において存在感を増しているインドであるが、一筋縄ではいかない独自の外交戦略をとっている。基本的に「米中パキスタン」対「ソ印バングラディシュ」であるが、対中関係は複雑であり、現代版シルクロード構想である「一帯一路」については警戒している。また、太平洋とインド洋を結合して考える「インド太平洋」について、包摂的で経済的なものとしてアプローチしている。

 これからの世界はインド抜きには語れなくなる。そのインドの台頭に合わせて、その複雑な立ち位置について書かれた興味深い本だ。一筋縄ではいかない立ち位置にあるため、日本のみならず他国でもインドとの外交は難しい。だが、核を保有していることもあり、慎重に対処すべき相手であることは間違いない。これからインドがどのようなプレゼンスを見せ、その国際的規模に応じたどのようなふるまいを見せるか注目される。