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白石昌則『生協の白石さん』(講談社)

 東京農工大学の学生生協で、学生からの要望カードに生協職員が当意即妙に答えた記録。学生からのナンセンスな質問やふざけた質問に対して、ユーモアを交えながら寛容に答えている。普通なら腹を立てたり無視したりするような質問に対しても、ユーモアたっぷりに、生協の宣伝を添えつつ答えている。基本的に商品の要望のコーナーではあるが、それに限らず様々な投稿があり、それに対して自由で優しい気持ちになれる答えが返されている。

 白石さんは妻子持ちの中年男性だ。だからこそこのような回答ができたのだと思う。人間としての成熟が人間としての余裕を生み、それがこのような寛容なユーモアとして醸成されている。ユーモアはやりとりの潤滑油。それを承知している。ユーモアは自分も相手もリラックスさせ、さらには生協の宣伝までできてしまうのである。人間が成熟していることが様々なメリットを生むことの好例であろう。