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会田雄次『アーロン収容所』(中公新書)

 第二次世界大戦敗戦後イギリス軍の捕虜となった記録を詳細に描いている。捕虜としての極限的な生活や、現地人とのやり取り、イギリス人とのやり取りなど詳細に描いている。何よりも著者に苦痛を与えたのは、イギリス人が捕虜の人権をないがしろにし、侮蔑と無視の態度をとったことだったという。人間の尊厳が認められないということが一番の苦痛だったのだ。

 捕虜の人権を無視するということは、戦時状態では当然のことだったのかもしれない。実際日本軍も同じことをしただろう。だが、イギリスは人権の概念が発達した国であり、そのヒューマニズムで知られている国である。西欧のヒューマニズムは所詮この程度でしかなかったのか、というものを感じる。だが、戦争というものは子の人間の残酷さ、相手の人権を蹂躙するという攻撃性をそもそも備えているのかもしれない。その残酷さがたまたま戦争という舞台で出ただけかもしれない。だとしたら、人間はその暴力性とヒューマニズムにいかに折り合いをつけていくか。根本的な問いかけをしてくる本だ。