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なぜ公務員は保守的なのか

 公務員には保守的な人が多い。これは私が地方公務員として勤務して得た実感である。旧例を重んじる。現状肯定的である。労働者としての権利を主張するよりも組織に従順であり、組織の利益を重んじる。

 これには日本の公務員採用の仕方においてメリトクラシーを採用していることがかなり影響していると思われる。公務員として採用されるためには公務員採用試験に合格しなければならない。これにはそれなりの知能や知識、社会的資質などが要求される。能力的に優れた人でなければそもそも公務員になれないシステムになっている。

 能力的に優れた人というのは多くの場合、高収入の世帯に生まれ、家庭環境に恵まれ、文化資本を蓄積している。マイケル・サンデルの指摘があった通り、生まれが恵まれているからこそ優れた能力を獲得できるのである。私も多くの新入職員が自分の車を持っていることに驚かされた経験がある。私などは生まれが貧しいので車などとても買ってもらえなかったが、多くの公務員は恵まれた家庭に生まれているので当然自分の車も持っている。

 ネット炎上に加担する人の正体を暴く調査があった。ネット炎上に加担する人はひきこもりやニートの若者ではなく、社会的に成功した中年の男性の割合が高いという。社会的地位が高く、収入も多い人間は自らの境遇に満足しているので、それを批判されるのを嫌う。現在の日本は治安もよいし文化も発展しているしいいところずくめだ。そのように自らの現状が恵まれている人は現状を肯定する保守的な思想を持ちやすいのである。

 同じように、公務員もまた恵まれた家庭環境に生まれた公務員採用試験の勝者であり、安定した地位と収入を持っている。公務員の多くは現状に満足しているのではないだろうか。だとすると、公務員に保守的な人が多いことは納得ができる。