倫理学の根本を探求した本。倫理はしばしば宗教・政治・経済・法律と混同されて互いに入り混じってしまう。宗教・政治・経済・法律が混ざっていない純粋倫理について本書は探求している。純粋倫理は言語以前の倫理であり、身体的であり気分や情緒に左右される。それは習慣やマナーというありふれた経験である。ただ、そこには得体のしれないまま倫理的な判断や行動が決定させられてしまう不気味さがあり、それを解消しようと抽象的な倫理学が形成された。
本書は、おそらく主にレヴィナスに依拠して倫理学の根本問題について思考していると思われる。倫理というものは原理的に身体的であるという思考がまさにそれであり、そこから習慣やマナーが形成されていく論述の仮定は見事である。純粋倫理というものがどういうものか、不純物を切り分けて思考していくのが小気味よかった。