社会科学読書ブログ

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寮美千子編『空が青いから白をえらんだのです』『名前で呼ばれたこともなかったから』

 奈良少年刑務所において、編者が「社会性涵養プログラム」として行った詩作講座での受刑少年たちの作品集。受刑少年は、貧困や虐待、いじめなどの被害を受け、心を固く閉ざして犯罪まで追い詰められた少年たちだった。そういった少年たちが内面を詩として表出することで、カタルシスを得る、周りからの承認・共感を得る、その過程を通じて傷を癒していく。その過程を記した詩集である。その作品群には、受刑少年たちの過酷な経験と孤独で傷ついた内面が現われていて、我々の胸を強く打つ。

 何度も号泣した。私も心に深い傷を負っていて、硬い鎧で心を覆っているので、少年たちの気持ちがとてもよくわかる。だが、少年たちは恵まれている。自分の傷をこのように癒してくれる更生のプログラムが存在するからだ。我々大人たちは、深い傷を抱えながらも生活のために日々働き、そこでまた傷を負いながら生きていかなければならない。深い傷が癒える更生のプログラムを私も受けたいと思った。ある意味少年たちは恵まれているが、彼らのバックグラウンドを考えると、そこにさらに犯罪者としてのスティグマを刻印してしまう刑事制度の矛盾を考えざるを得ない。