社会科学読書ブログ

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野村庄吾『乳幼児の世界』(岩波新書)

 乳幼児の発達について心理学の立場からまとめてある本。乳児の睡眠の特徴や、人間特有の笑い、手は口ほどにものをいうこと、共感と共鳴、贈与の関係、認知的機能の発達、考える力、関係性の構築、素質と環境の関係、などについて、乳幼児の発達の過程を跡付けている。1980年の本ではあるが、今読んでも得るところの多い本である。

 赤ちゃんは何もしていないのではない。赤ちゃんは立派に人間なのであり、様々な人間的行動をとっている。そういうことを言いたいのだと思う。実際に、乳児であっても笑ったり意思表示したり、人間的な行為をいろいろとするものである。それが幼児になってくると、不完全ながらも言葉を覚えたり考えることができたり、どんどん人間性を帯びてくる。そもそも人間である赤ちゃんが、徐々にその人間性を強めていく過程について丁寧に跡付けている本である。このようにコンパクトにまとまっている本は少ないと思うので貴重であろう。