社会科学読書ブログ

社会科学関係の書籍を紹介

岡本夏木『子どもとことば』(岩波新書)

 子どもの言葉の発達についてコンパクトにまとまった良書。乳児は言葉を発さなくても行動などでコミュニケーションする。言葉によるコミュニケーションに先立ち、言葉によるコミュニケーションの土台を形成するものとして、行動の協約化がある。行動の協約化とは、コミュニケーションの意図の発生と表裏して、自己と相手との相互了解に基づくシグナルの交換のことである。行動の協約化は、初め情動性を備え、そののちに行動性をそなえ、最終的に認識性を備える。言葉による象徴化は、その下層に情動的喚起を主とする対象、行動的対象の性質を潜在させていて、この三層により子どもの言葉は成立している。

 本書は子どもの言葉の発達について、発達心理学の見地から詳細に論じている本である。1982年の本であり若干古いため、現在ではもっと研究が進んでいるかもしれないが、それでもなお子育てする中でうなずく点の多い書物だった。育児をする中で、いろいろ学んでいると効果的に子どもを育てることができるように思われる。乳幼児関係の本はどんどん読んでいきたい。