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リベラル公務員

 日本は現代多様な問題に直面している。何よりも少子化が止まらないし、高齢化も進展している。デジタル社会に対応していかなければならないし、男女格差も依然解消されない。そんな中移民が増えたり性的少数者が注目されたり社会は多様性を増している。電気自動車の開発、持続可能な社会の実現、とてもじゃないが数えきれないほどの課題に直面している。

 そんな中、社会を変えていく権限が与えられているのが公務員である。もちろん立法機関が法律を定めるわけであるが、それを執行するのは行政であり、行政の実働部隊が公務員なのである。社会を変えるための立法を執行するだけでなく、地方独自の新たな試みも必要となっている。実際、国よりも地方自治体の方が先行して新しい制度を取り入れた事例は数多い。

 そういう目まぐるしく変動する社会において、公務員はリベラルであることが望ましい。ここで「リベラル」とは政治的な立場というよりも、「常に学習・情報収集し、変化を恐れない」立場ととらえていただきたい。

 確かに、定常的な社会では、公務員は紋切り型の仕事をしていればよかった。決められたことを決められたとおりにやっていればよかったのだ。それこそ「お役所仕事」と揶揄されるような仕事をしていればよかったのだ。もちろん「お役所仕事」にもメリットがあった。厳密な手続きで理屈にのっとって間違いのない仕事をするということ。それが公平で合理的で社会秩序の維持に役立っていたのである。定常的な社会では、保守的な公務員の方が仕事に適していたのかもしれない。

 だが現代は事情が異なる。日々変動する社会において次々と新たな課題が生じ、しかもどれも喫緊の課題であり、日本の国際的な地位の存続にもかかわってくる課題である。そのような課題に直面して、公務員はまず現代においてどのような問題があるか深く学習しなければならないし、それに対する対応策を創造的に考えていかなければならない。それは前例踏襲のやり方では解決しない問題なのである。

 だから、現代においてはリベラル公務員の活躍が期待されている。幅広く社会問題について学習し、それを解決するために旧例にとらわれずに仕事をしていく公務員である。もちろん、旧来のお役所仕事のメリットは生かし続ける必要があるが、お役所仕事だけではなく、新たなアイディアを生み出し行動していく公務員の活躍が期待されているのである。公務員というとどうしても保守的なイメージが付きまとうが、そのようなイメージを壊していかなければなるまい。